あきはぎは したばのよそに みしかども ひとりねむとは おもはざりしを
秋萩は 下葉のよそに 見しかども ひとり寝むとは 思はざりしを
秋萩の下葉は、自分とはかかわりないものとして見ていたけれども、下葉の色づく頃、寂しく一人寝の夜を過ごすことになるとは思わなかったよ。
萩の下葉は、しばしば恋とからめて歌に詠まれます。萩は紅葉ならぬ黄葉が美しいですが、なかでも下葉がまっさきに色づくのが特徴で、それが人の心の移ろいの象徴と考えられていたのでしょう。万葉集では、桜よりも梅よりも萩の花がもっとも多く詠まれているのだそうです。
この歌は新続古今和歌集(巻第十五「恋五」 第1448番)に入集しています。そちらでは初句は「あきはぎの」とされていますね。