11月5日(木)晴れ【『僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から』を読んで】
今日は、本覚思想について学んだことを書くつもりでした。午前中は沖縄でご苦労をなさったご家族の法事をさせて頂いて、それから新しく檀家さんになった人の戒名をつけさせていただいて、これから本覚思想について学んだことを書かせてもらおうと思っていました。今日は来客も少なかったので、多少時間がありました。
ところが、或る本を購入しようとしましたら、今日のブログのタイトルにした本の宣伝がありまして、思わず購入しましたところ、今日もう届きました。読み始めましたら、川名壮志という作者の筆力に負けてしまいまして、一気に読んでしまいました。
「佐世保小6同級生殺害事件」この事件のことを覚えている方はいますか。私にとっては忘れられない事件です。小学6年生の少女が、同級生の御手洗怜美ちゃんをカッターナイフで、殺害してしまったという事件です。あまりに衝撃的でしたので、よく覚えています。また拙書『尼僧の供養記 雲と風と月と』の中にも書かせていただきましたので、少なからず関心がある事件です。
私は、この事件の前日、カッターナイフによる殺人事件というテレビ番組をたまたま見まして、「こんな番組を観て真似をする人がいないとよいが」と思ったことも忘れられません。
なんで怜美ちゃんが殺されなければならなかったのか、それも同じ小学生に。理解しがたい事件に、やりきれない思いを抱きました。
この加害者の少女が『バトルロワイヤル』が好きで何回も観ていた、という記事も目にしましたが、あまりに刺激的な殺し合いの映画ですよね、これは。私は他の映画を観に行った時予告編を観まして、呆れました。最近、また若いグループがこの映画に「はまっている」という記事もチラッとインターネットで目にしまして、私は心配しています。これが高校生同士の争いとして描かれているところに問題があると思います。学園物の延長のように、若い人たちに受け取られてしまい、人間の中にある暴力性、残虐性を挑発してしまうところが危ないと思います。
『僕とぼく』は、なんの罪もない御手洗家のたった一人の可愛いくて明るい妹を、小学生の同級生の少女によって、殺害されてしまった二人の兄の、その前とそれからが書かれているノンフィクションです。どのような事件でも被害者の方々の「それから」があります。
しかし、順番はつけがたいですが、本当に辛かったのは、お父さんであると思います。この本のタイトルは『僕とぼく』ですが、お父さんの苦悩がずっと文字の裏に書かれていることを感じました。僕である御長男が結婚されて、可愛いお孫さんが産まれたそうです。女の子だそうです。その子を抱き上げるお父さん。
「はじめて俺、幸せだ、幸せになっていいんだな」と思えたそうです。よかった。
「僕」の言葉として《幸せってきっと、名もない一日に詰まっている。家庭や家族が人生のすべてではないけれど、心休まる場所があるってのは、幸せの条件のような気がする。》(本書252頁より)