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「勝利宣言」ハイブリッド・トヨタの覇権時代が当面続く

2024-06-22 04:38:21 | 日記
真に脱炭素の実現のためには電気自動車(BEV)以外の選択肢も同時進行的に用意しなければいけないという、トヨタが以前より主張している考え方である。マツダも以前からほぼ同様の主張をしている。
「マルチパスウェイ」というのは「複数の道」という意味で、 マルチパスウェイの中には、内燃機関(ICE)を利用するハイブリッド(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)も含まれ、BEVはマルチパスウェイの1つでしかないという位置づけなので、トヨタは脱炭素に消極的と世界各国から、また日本でも一部メディアから非難されてきた。しかし最近になって世界的に雲行きが変わってきた。 
HEVはBEVほどCO2削減には貢献しないが、使い勝手は通常のガソリン車と変わらず、価格上昇も限定的でBEVほど高価でなく、通常のガソリン車より大幅にCO2排出量を少なくすることができる。
つまりHEVは、多くの人に買ってもらうことのできる特性を持っており、数が増えればそれだけCO2削減効果は大きいのである。
PHEVは、充電しない限りHEVより大型のバッテリーを積んでいることが徒(あだ)となってハイブリッド走行時の燃費がHEVより悪くなってしまうという欠点があるが、自宅充電ができる人であれば日常は自宅充電の電気だけで走ることができ、長距離移動時は充電の心配がないという、BEVより使い勝手に優れた選択肢だ。
HEVの技術は日本のメーカー、特にトヨタが圧倒している。2000ccクラスHEVの燃費(WLTCモード)を比較してみると、トヨタ・プリウスが28.6km/l、ホンダ・アコードが23.8km/l、BMW330e(PHEV)が13.4km/l(ハイブリッド走行時)、メルセデスベンツC350e(PHEV)が12.9km/l(ハイブリッド走行時)である。
プリウスはPHEVでも26.0km/lなので、ドイツ勢の半分の燃料で走ることができる。動力性能も優秀で、BMW 330eとメルセデスベンツC350eの0-100km/h加速5.9秒に対し、プリウスPHEVは6.7秒と大きく見劣りしない。
今回のイベントでは、マルチパスウェイの正しさを強調するだけでなく、新しいパワートレインの発表も行われた。
マツダは2ローターのロータリーエンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド方式を、スバルは水平対向エンジンにトヨタのシリーズパラレル方式を組み合わせたハイブリッドシステムを披露した。
それぞれのメーカーの個性を強調した、楽しみなユニットであるが、さらに、トヨタがまた一歩業界をリードするであろうハイブリッド用エンジンを発表した。
欧米の自動車メーカーはBEVシフトを急ぎ、新規ICEの開発は基本的に取りやめており、従来型のエンジンを継続生産している(BMWはICEの開発を継続していると発表している)。
ようやく2024年になってメルセデスベンツは新しいICEの開発を再開すると発表し、ルノーは吉利汽車と組んで新世代ICEを開発する会社を立ち上げたが、この間にもトヨタは新世代ICEの開発を積極的に続けていたのである。
トヨタの「勝利宣言」
トヨタの新型エンジンは、ハイブリッドシステムと組み合わせることを前提に開発されている。ハイブリッドであれば低速走行時はほとんど電気モーターに任せることができるし、強力な加速が必要な時は電気モーターのアシストが期待できる。
つまり、従来のICEのように高回転まで回る必要はないし、低速トルクも必要ない。もっぱら燃費効率のみを追求することができるのである。また小型軽量化にも成功しており、小型化はより空力性能の優れたスタイリングを採用することができるので、車体側の燃費性能向上にも貢献する。
今後、ICEの排ガス規制はさらに強化されるので、従来型エンジンで規制に対応させようとすると大幅な出力ダウンが避けられない。だが、新型エンジンは最初から規制対応を前提に設計されているため、今まで通りの出力が出せるという。さらに走行時における電気走行の割合も高まると発表されている。
つまりハイブリッドシステムとしての効率も向上しているはずだ。
従ってこの発表会は、事実上トヨタの勝利宣言のような発表会だったといえるだろう。
トヨタの覇権時代が当面続く
仮に、BEVが30%程度までシェアを伸ばしたとしても残りの70%はICEが搭載されたHEVやPHEVが主力となるはずだ。
合成燃料やバイオ燃料が普及すればBEVの普及はさらに限定的になるかもしれず、ICE搭載車の寿命は当初想定されたより遥かに長いかもしれない。この新型エンジンと新ハイブリッドシステムのアドバンテージは相当なものだろう。今でもHEV技術で世界を大きくリードしているのに、その差をさらに広げることは間違いない。
さらに、トヨタはBEVにも本気で取り組んでいる。再来年の2026年には150万台を生産する計画だが、その数字はテスラの2023年の販売台数である180万台には劣るものの、フォルクスワーゲングループ全体のBEV販売台数である77万台の2倍という台数規模である。

さらに、BEVが飛躍する鍵と思われる全固体電池に関して、トヨタはパナソニックに次ぐ世界第2位の特許数を誇っている(データ:特許庁)。
トヨタは将来BEVの時代が来ると予測しつつも、現状のリチウムイオン電池ではBEVの本格的普及は難しいと判断していたのであろう。総合的に考えると、トヨタ栄光の時代は当分続くと考えてよく、欧米メーカーは戦々恐々だろう。
コメント (1)
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