セパの力の差が歴然として来ました。日本シリーズがつまらなくなってしまった。セリーグはDH制を採用していないため、投手の変え時、代打などゲームと関係のない余計な計算をしなければならないとの意見が巨人原監督より出ています。今季のセ・リーグ6球団合計で投手は1614打席に立ち、打率1割、0本塁打。投手打率の最高はDeNAとヤクルトの1割3分で、最低は阪神の0割4分。巨人は0割9分6厘だった。数字が物語っています。只、現場の一流選手の共通認識はパが強いのは認めるが、制度の違いで負けているわけではないという点だ。それはアスリートの性ともいえるし、戦っている当事者の実感、さらには安易な採用への警鐘かもしれません、いずれにしても、早急に議論し、当面の結論を出すべきでしょう。
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今シーズンのMLBを締めくくるワールドシリーズ(WS)は、不利との下馬評を覆してナショナルズがアストロズを下した。ナ軍が世界一に輝いたのは球団初の快挙だが、それにもましてファンの注目を集めたのが全7試合、ビジターチームが勝利したというWS史上初のプロセスであった。
サッカーほどではないにせよ、野球というスポーツはホームチームが有利にできている。球場の特性をより把握していたり、大声援に力を得たり、あるいは接戦になったときに後攻の得点確率が高かったり。実際、多くのチームの多くのシーズンで、ホームゲームの勝率がアウェーのそれを上回っていることでも実証されている。
ましてやWSにはさらなる要素が加わる。それは指名打者(DH)制である。ア・リーグの本拠地での試合では採用し、ナ・リーグ側では投手が打席に立つ。今回でいえば、アストロズの本拠地であるヒューストンでの第1、2、6、7戦はDH制、ナショナルズの本拠地、ワシントンでの第3、4、5戦は投手が打席に立った。つまり、レギュラーシーズン以上にホーム有利の条件がそろっていたのだが、勝利したのはすべてビジターだった。
DHを「損得」で考えると……。
長いWSの歴史で前例のないことが起こったのだから、偶然いや奇跡に近いのかもしれない。この機に乗っかって、野球ファンなら誰しもが考える「DH論」に触れてみる。
真っ先に出てくるのが「損得論」である。普段は打席に立たない投手が立ち、打撃に特化していることの多いDH型選手が、普段はつかない守りにつくか、ベンチを温める。
こうしたことを考えたとき、ア・リーグ(NPBではパ・リーグ)がナ・リーグ(セ・リーグ)に合わせる方が厳しそうだ。投手のバントや進塁打、DH型選手が守備につけば誰かがベンチに下がるし、守備につかなければ打線の中軸を打つDH型選手がベンチに下がる。打順の再編を迫られるわけで、対応することが多いからだ。
ナ・リーグ(セ・リーグ)がDH制にするときも、新たな野手が加わるわけだから打順は組み替えられるが、常識的に考えれば中軸を打つ選手が入ることはない。それでもシーズン中よりは全体の攻撃力がアップするわけで、当事者はポジティブにとらえられることだろう。
「パ強セ弱」の原因はDH制?
次に出てくるのが「育成論」。レギュラーとして出場できる野手が1人多いため、実戦経験を積みやすい。投手も投球に専念でき、切れ目のない打線を相手に切磋琢磨する。結果としてどちらのレベルも上がるため、育成の観点からいってもDH制の方が優れているという論理だ。
「セ・リーグもDH制を導入すべきだろうね。相当、差をつけられている感じがあるし、取り入れれば全体的にレベルも高くなってくると思う」
巨人の原辰徳監督がDH制導入案を提言したのは10月24日のことだ。日本シリーズでソフトバンクに4連敗した翌日での囲み取材での発言は、球界内に波紋を呼んだ。セ・リーグの現役監督としてはかなり踏み込んだものだが、WSがまだ第2戦しか終わっていない段階での発言だ。
日本シリーズで完膚なきまでにたたきのめされたゆえの泣き言というよりは、先述したDH論でいえば「育成論」に立っての持論を披露したようだ。短期決戦での敗因にしたいのではなく、もはや誰もが当たり前と受け止めている交流戦のチーム別順位や、7年連続で日本一はパ・リーグという、長年にわたる「パ強セ弱」の原因をDH制に求めているのだ。
侍ジャパンの4番の考えは?
パの方がセより強い。これは動かしがたい事実だが、その原因は原監督の言うように本当にDH制にあるのか。セ・リーグの現役選手に意見を聞いてみた。まずはプレミア12の侍ジャパンで4番を任されている鈴木誠也(広島)だ。
「うーん、それって(セ・リーグが)負けているからって意見ですよね。だとしたら、セにはセのよさがあると僕は思っているし、負けている理由はそこではないと思います。これはソフトバンクを見ていて感じるんですけど(強い理由は)育成力でしょ。DHにしたから、そこが埋まるとは思えない」
導入ありきではなく、なぜパが強いのかということにもっとしっかり向き合え。それが侍の4番の考えだった。続いては代表のエース格である今永昇太(DeNA)。
「難しい議論ではありますね。強い、弱いも少しは(DH制と)関係あるのかとは思いますし。投手として言わせてもらえれば楽ではあります。バントや走塁の練習をしなくて、投手の練習を増やせますから。ただ、僕個人の考えとしてはセパそれぞれいいところがあっていいと思うし、差別化をはかるというか違いがあっていいんじゃないかと」
誠実な今永らしく、投手としての考えと野球人としての考えをしっかりと分けてまとめてくれた。
中日・大野は「個人としては賛成」。
最後がセ・リーグ最優秀防御率に輝いた大野雄大(中日)だ。
「採用する理由によりますよね。それが負けているからということなら、敗因はもっと他のところにあると思っているので。
でも、選手としての立場なら大賛成です。何よりも投げることに集中できる。打撃を練習でやるのは気分転換になったり、楽しさもあるんですが、試合の中では周囲の皆さんが思っているより負担になるんです。(打撃は得意ではないが)打てるかどうかより、準備に対してですね。僕は交流戦での成績もいいと思っているし、好きなんですが、そこも関係しているのかなという自己分析です」
3人に共通しているのはパが強いのは認めるが、制度の違いで負けているわけではないという点だ。それはアスリートの性ともいえるし、戦っている当事者の実感、さらには安易な採用への警鐘とも受け止められる。
国際大会ではDH制が大前提。その一方でセパの違いがあるからファンの議論を呼び、楽しめる。思慮深い原監督のことだから、単なる個人の思いつきを口にしたのではなく「巨人軍の姿勢」を巧みに発信した可能性がある。しかし、ここから流れが一気に加速するとしたらいかがなものか。あくまでもきっかけとして、議論を活発に、慎重に深めた上での結論(採用)なら現役選手やファンも納得できるのではないだろうか。