「パ・リーグ」に「セ・リーグ」が歯が立たない理由は親会社の連結売上高の差でした。セリーグ全体で、親会社の不在の広島カープを除き、連結売上高約2兆円、パリーグでは非上場ロッテマリーンズを除き約13兆5千億円です。年俸格差は助っ人外国人選手の格差にも繋がります。もはや、セリーグはパリーグに歯が立たない状態が続き、親会社の入れ替え、本拠地の移転などがなければ魅力低下するはずです。コロナ禍はセリーグ改革を早めるかもしれません。
❷DeNAで監督を務めたアレックス・ラミレス氏が、自身のユーチューブチャンネルで「パはセより5年先を行っている」などと両リーグの差について言及した。パは「本当にパワーのぶつかり合い」パの先発陣の70%が150キロ以上の球を投げ、リリーフ陣にも球速150キロ以上の投手がいるため、パの打者は「スピードに慣れている。日々、当たり前のように対戦し、打者も成長する環境にある」。「セの投手の60%は144~147キロの球速で投球する」とし、交流戦でもパの打者に打たれることが多い傾向にあると指摘。セの打者は150キロ以上の速球に慣れておらず、「メンタル的にもとても速く感じるため、対応が難しくなる」と話した。 プロ野球は今後、150キロ以上以上の直球を投げられないと基本的に通用しないのかもしれません。
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今年の日本シリーズもパ・リーグ優勝チームである福岡ソフトバンクホークスの圧勝に終わった。ソフトバンクは4連覇。その強さが際立っているが、それとともにセ・リーグの劣勢が際立っている。
ここ10年の日本シリーズでは、2012年の巨人を除き、すべてパ・リーグのチームが制している。10年の通算成績は、パ・リーグの38勝17敗1分、ここ3年に限定すればパの12勝1敗1分である。 セ・パ両リーグの選手が、公式戦で対戦する「交流戦」は、2005年から始まった。今年は中止となったが、2019年までの15年間で、14回パの勝ち越しに終わっている。通算ではパの1098勝966敗である。
もはや「パ・リーグはセ・リーグよりも強い」が定説になった感がある。なぜ、ここまで決定的な差が開いたのか?
■親会社の歴史の「差」 筆者は以前から「指名打者制(DH)」について言及している。NPBではパ・リーグがDH制を導入、セ・リーグは導入していない。アメリカでもDH制があるアメリカン・リーグがインターリーグ(交流戦)でDH制がないナショナル・リーグに勝ち越しているのだ。 また、セが「先発完投」にこだわり先発投手を重視するのに対し、パは「救援投手」を重視する。今回の日本シリーズでも、巨人はソフトバンクの「勝利の方程式」の前に屈したという面もあるだろう。
しかし、パ・リーグの優位はそれだけではない。経営やマネジメントのレベルでも、パはセよりも進化している。取材などを通してNPB各球団と折衝することもある筆者は、セ・パ両リーグの「体質」「文化」の違いをひしひしと感じるのだ。ここでは、経営やマネジメントに焦点を当てて、両リーグの差を論じてみよう。 NPBの前身である「職業野球」は、1936年に始まった。今年で84年になるが、創設当初に参入して現存している球団は、巨人、阪神、中日の3つ。すべてセ・リーグだ。1950年に2リーグに分立するが、この時点で参入したのが広島、そして1966年にサンケイ新聞から球団を引き継いだのがヤクルトだ。セ・リーグで平成以降に親会社が変わった球団は2012年にTBSなどから経営を引き継いだDeNAだけだ。
これに対し、パ・リーグで最古の球団は、1969年に毎日新聞社などから経営を引き継いだロッテだ。次いで1974年に日拓から引き継いだ日本ハム、1979年にクラウンライターから継承した西武、1988年に阪急から継承したオリックス、2005年にダイエーから経営権を引き継いだソフトバンク、同年に新球団を創設した楽天となっている。 社歴が60年を超す「老舗球団」はすべてセ・リーグなのだ。かつてプロ野球参入御三家と言われたのが「新聞」「鉄道」「映画」の3業種だったが、映画界が斜陽となり、松竹、大映、東映が球団を手放した。鉄道も、東急、西鉄、南海、阪急、近鉄の5社が球団を手放し、今は阪神と西武の2球団になっている。新聞は、毎日、サンケイが撤退し、今は読売新聞、中日新聞だけとなっている。
これに代わって台頭したのが「IT系」だ。パのソフトバンク、楽天、セのDeNAがこれに当たる。オリックスもIT系のビジネスが多い企業グループだ。こうしてみても、セ・リーグの親会社のほうが「古い会社」が多いことがわかる。 筆者は各球団の広報に取材の申し込みをすることがしばしばあるが、セ・リーグの球団の中にはほんの2~3年前まで「申し込みはファクシミリでお願いします」という球団があった。いろいろな手続き面でも、古いなあと思わせることがしばしばあった。「老舗、名門」と「新興、ベンチャー」、セ・パ両リーグには親会社の「体質」が反映しているのではないかと思う。
■企業規模の「差」 セ・パ両リーグの親会社の差は「新しさ、古さ」だけではない。企業規模も大きく異なっている。
■セ・リーグ 読売ジャイアンツ 親会社:読売新聞グループ本社 グループ売上高 約5818億円(2019年3月期) 阪神タイガース 親会社:阪急阪神ホールディングス 連結売上高 約7625億円(2020年3月期) 中日ドラゴンズ 親会社:中日新聞社 売上高 約1221億円(2019年3月期)
横浜DeNAベイスターズ
親会社:ディー・エヌ・エー 連結売上高 約1214億円(2020年3月期)
広島東洋カープ 親会社:なし 東京ヤクルトスワローズ 親会社:ヤクルト本社 連結売上高 約4070億円(2019年3月期)
■パ・リーグ 福岡ソフトバンクホークス 親会社:ソフトバンクグループ 連結売上高 約6兆1850億円(2020年3月期) 千葉ロッテマリーンズ 親会社:ロッテホールディングス 非上場
東北楽天ゴールデンイーグルス
親会社:楽天 連結売上高 約1兆2639億円(2019年12月期)
埼玉西武ライオンズ 親会社:西武ホールディングス 連結売上高 約5659億円(2019年3月期)
北海道日本ハムファイターズ 親会社:日本ハム 連結売上高 約1兆2298億円(2020年3月期)
オリックス・バファローズ 親会社:オリックス 連結売上高 約2兆2803億(2018年3月期) 親会社の定義やグループの定義など、各球団によって種々違っているので、正確な比較はできないが、親会社の売り上げ規模ではパ・リーグ球団のほうがセ・リーグ球団よりもはるかに大きいことがわかる。
巨人や阪神などは選手獲得に巨費を投じることがあるので「金満球団」と言われるが、後ろ盾となる親会社の売り上げ規模で言えば、パの球団のほうがはるかに「金満」だ。「パ・リーグ球団のほうが貧乏だ」という思い込みは間違いだということがわかる。
なお広島は1950年に親会社なしの「市民球団」として発足したが、1968年に東洋工業(現マツダ)が親会社となる。しかし現在、球団はマツダの連結子会社を外れており、損失補填などもしないことから親会社ではないとされている。
パ・リーグ球団の親会社は、巨大なだけではなくベンチャー企業的な側面を持つ会社が多く、進取の気性に富んでいる。このことも球団のマネジメントの差につながっていると考えられる。
これらの球団は新しいマーケットで、地域密着型の新しいマーケティングを打ち出した。とりわけダイエーから経営を引き継いだソフトバンクは「ボールパーク構想」を打ち出し、九州一円に熱狂的なファンを創出した。 こうした新たなビジネスモデルは、プロ野球中継の視聴率が低迷し、放映権ビジネスが縮小する中でセ・リーグ球団にも波及したが、パ・リーグのほうが、マーケティングでは一枚上手だ。 またパ・リーグ6球団は2006年にパシフィックリーグマーケティングという会社を共同で設立。プロ野球動画配信サービスのパ・リーグTVの運営や、6球団の公式サイトの企画・運用・管理、合同イベントなどを、共同で行っている。
パ各球団の公式サイトは同じフォーマットで作られている。スタイルもサイトマップもばらばらのセ球団の公式サイトよりも利用しやすくなっている。6球団が共同で行うビジネスの仕組みを作ったのだ。単独の球団で行うよりもスケールメリットが見込まれる。いまだに各球団が単独でビジネスを展開しているセ・リーグとは対照的だ。 2004年の「球界再編」をきっかけとして、パ・リーグが長年要望してきた「交流戦」が実現し、セ・パ両リーグの球団が公式戦で対戦することとなった。これも、セ・パの格差を縮めるうえで、大きな意味があった。1979年、セ・リーグの観客動員が史上初めて1000万人を突破し、1075万2000人を記録したときに、パ・リーグは半分以下の522万人にとどまった。
それが2019年にはセの1486万7071人に対しパは1166万9891人と、ほぼ肩を並べるところまで来ている。この背景には、長年にわたるパ・リーグ球団の多面的な努力があったのは間違いない。 広尾 晃氏