夫婦2人の場合、20年前の受給額は平均して年間300万円だったのが、現在は220万円になったと言われる。つまり、3割近く減った。しかし、消費税は上がり17年4月からは生活費がさらに2%確実に上昇する。今後は、出費年間300万円で無時暮らしていけるかも分かりません。夫婦どちらかが大きな病気でも罹れば出費は跳ね上がります。何度も書き込んでいますが、下記の①~④のような老後の生活を追い詰めるケースが、特別な例外ではなく待ち受けているのです。成人後、社会から締め出された子供の問題もあるでしょう。親の遺産やせっせと貯め込んだ資産が無ければ安易に早期退職などすべきではありません。出来る限り働き続け、稼ぎの中で生活すべきです。年金のみに頼る老後破綻は今後急増するのです。そして長寿であるがゆえの悪夢です。どのようにすれば乗り切れるのか?「働かざる者食うべからず。」国に頼らず働き続けるにとに勝る対策はありません。
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少子高齢化が叫ばれはじめてからというもの、われわれの人生設計に、前例がまったく適用できなくなってしまった。
たとえば、20年ほど前までは、会社員が定年まで勤め上げれば、退職金と年金で、まずまずの老後をすごすことができ、そのことが働き手にとってのインセンティブになっていた。
ところが、年功序列で増え続けるはずだった給与も賞与も伸び悩んだ挙句、退職金も雀の涙。年金も支給開始年齢を引き上げられたうえ、思ったほどの金額を受け取れない――と、そんな“残酷物語”こそが“一般的”になっているのだ。
いや、それでも、つましい暮らしを維持できればいいが……。昨日まで豊かに暮らしていた人が“破産”同様に追い込まれ、“悪夢”としか言いようがない老後を送るケースが、もはや珍しくないのである。
■① 住宅ローンの返済計画が破綻
その要因について、
「年金の受給額が年々減っていることが大きい」
と解説するのは、ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏である。
「夫婦2人の場合、20年前の受給額は平均して年間300万円だったのが、現在は220万円になったと言われる。つまり、3割近く減ったのです。ところが生活費は、ここ20年ほど年間300万円で変わっていません。つまり、普通に生活するだけで、1年で80万円の赤字になってしまいます。60歳の夫婦が90歳まで生きれば、2400万円の赤字が確定するんです」
むろん、赤字を補える資産があればいい。だが、それが十分でない場合は、
「退職金で補填することになりますが、サラリーマンの退職金は平均して2200万円ほど。すでに200万円不足しているわけですから、潜在的な老後破産予備軍は、かなりの数に上ると考えられます」
そして、そのすべてを注ぎ込んでも、今や老後の最低限の生活を補うには至らないとはいえ、退職金は、
「手をつけてはいけない老後の命綱」なのだから、
「住宅ローンの返済に充ててしまったら、その分だけ命綱がやせ細り、老後破産が近づいてしまいます」
② 老後破産の予防策として、「無理な資産運用をしない」ことを挙げ、こんな例を示す。
「私のところに相談にきた自営業の方は、還暦を機に事業を第三者に3000万円で譲渡しました。それが退職金代わりの“老後の命綱”だったのですが、銀行の営業マンに勧められるまま、国内株と海外株の投資信託に数百万円ずつ突っ込んでしまった。年利20%にもなるという触れ込みでしたが、株価が暴落して投資額の半分が飛び、取り戻すためにまた投資。最後はリーマンショックの煽りで大暴落し、手元に200万円しか残らなかったんですね。持ち家も手放して、関東近郊の家賃3万5000円のアパートに引っ越し、生活保護を受給しています」
住宅ローンや資産運用から老後の生活を追い詰められているケースは、はたして例外なのだろうか。明治学院大学社会学部の河合克義教授は、
「2012年に東京都港区の、75歳以上の高齢者を含む2人世帯を調査したところ、高齢者夫婦のみの世帯については、年収250万円未満の世帯が26・3%を占めました。4世帯に1世帯は生活保護水準に近い生活をしているのです」
そう語って、続ける。
「同じ港区でその前年、65歳以上の1人暮らしを調査しましたが、生活保護水準である年収150万円未満の人が37%に上った。港区の高齢者の平均所得は全国的にも高いと思われますが、一部の高所得者が平均を引き上げているだけで、貧困にあえいでいる高齢者は大勢いるのです。年金を満足にもらえている人は多くないうえ、年金額自体が引き下げられ、その中から各種の社会保障費などを払わなければいけないのです」
■③ 生活をダウンサイジングする
老後に貧困に陥る人がいかに多いか。そうならないために、あらかじめ生活をダウンサイジングすべきだと説くのは、『老後に破産する人、しない人』の著書があるファイナンシャル・プランナーの中村宏氏だ。
「老後破産に近いのは“この先不透明だから、今から考えても仕方ない”と開き直って、何も準備しない人。リタイア後、解放感があるし退職金もあるからと、夫婦で旅行に行ったり、飲み会を開いたりと、むしろ浪費してしまう。そういう方の多くがクレジットカードを使っていますが、カードは捨て、月々使う金額だけを財布に入れてやりくりするのが、簡単にできるダウンサイジングの方法です」
話を戻すと、河合教授は、たとえば医療費が、高齢者は一律で1割負担であることに疑問を挟み、秋田県の女性(84)を例に挙げた。
「15年前に夫と死別し、年金額は月2万5000円で、光熱費を払うと残金は1万円。食費は月4000円ですが、足りないので、近所で山菜や川魚を採っている。この人の医療費は、月2500円と収入の1割を占めているのです」
最低限の生活にかかる費用を設定し、収入がそれを下回らないように、医療費や介護費の負担を調整する政策が必要だ――。河合教授はそう説く。
■医療費の増加でギリギリの生活に
千葉県に住む須田佳子さん(67)=仮名=も、医療費や介護費に生活を圧迫されていると、こう語る。
「私は市議を4期務め、夫は親の鍼灸院を継いでいました。夫の両親が所有する130坪の土地に建つ2階建てに、私たち夫婦と4人の子供も同居していましたが、夫の父が認知症になり、続いて夫が心臓弁膜症を患って手術を受けたのを機に、マンションに建て替えました。7階建てで27部屋、建築費は2億3000万円で、4000万円あった貯金を頭金に、残りは25年ローンを組みました」
現在、月々の支払いは110万円。それに対して、
「家賃収入が月130万円超ですが、修繕費の積み立てと管理費が月14万円、固定資産税が年間150万円なので、ほぼトントン。71歳の夫と私の年金が計22万円ですが、夫は9年前に心不全を起こし、7年前に胃がんで胃の4分の3を切除。4年前には敗血症とともに膀胱がんも見つかった。月2回の往診、1回の訪問看護、2回の訪問リハビリも受け、それぞれ2万6000円、1万4000円、9000円かかっていました。それが、8月から年収280万円以上の要介護の高齢者は、介護負担が1割から2割に引き上げられ、月に5万円ほどだった医療費が7万円になってしまいました。収支がトントンのところに2万円の負担増で、生活はギリギリまで追い詰められています」
仮に、須田さん自身も病に倒れたりすれば、破産は免れないという。
■④ 年金分割制度はできたもののー離婚による破たん
「熟年離婚によって破産に近い状態になる例もある」
といい、その際、男性よりも女性、それも専業主婦が危険だという。
「私のところに相談に来たのは、07年に奥さんから申し出て離婚協議に入ったという方。その年、それまでもらえなかった夫の厚生年金を、夫の合意があれば最大で半分受け取れるという法律もできたし、夫の資産も、半分程度もらえると考えたのです」
だが、夫の年間160万円の年金のうち、国民年金の60万円は折半されず、厚生年金の支払いも夫が渋って月3万円だけに。また、
「夫の資産から1000万円は受け取るつもりが、夫には借金もあり、受け取れたのは400万円だけ。結局、彼女は自分の国民年金と合わせて月9万円の収入しかなく、家賃4万円のアパートで独り暮らしをしていますが、破産は間近。熟年離婚の大半は女性からの申し立てですが、夫の厚生年金のうち妻が受け取れるのは、婚姻期間中に積み立てた分の最大半分。晩婚化が進む今、離婚後の厚生年金は当てにならないと考えたほうがいいでしょう」