ギリシャは借りての論理でEU側に譲歩を促しましたが、綿密に協議・計画をしてきたEU側はNOと回答通用しませんでした。金融相場でもギリシャは経済規模も小さく影響は限定的と既に織り込みつつあります。しかし、ギリシャ国民は問題が解決するまで大変です。一人一日60ユーロ(8000円)に制限された引き出し限度額・送金制限が継続されれば買収される大企業・破たんする企業・商店・個人が続出するでしょう。魚市場では値段を1/3に下げても売れないようです。手元にお金がないのですから、こういったお店が多発してもしょうがないでしょう。資金移動制限とは裏腹にEU内で裏資金・人的移動・値段が暴落したギリシャを訪れるユーロ圏内の外国人による観光が活発になります。生活が困窮化するにつれEU側との交渉能力が欠如し『返済できない』と当事者として不適切発言(貸し手側からみれば返済できない相手に猶予・追加融資はあり得ません。)をしているチプラス政権に対する内外からの批判が高まり政権崩壊への時期を速めることになります。
突然アテネ市内の公共金融機関が無料になったからか? ATMの前で大行列する市民
以下コピー 欧州中央銀行(ECB)はこれまでギリシャの銀行に対して、預金の引き出しに応じるのに十分な流動性資金を供給してきた。だが、交渉決裂を受けてECBは28日、銀行からの預金流出の動きが加速しているにもかかわらず、緊急流動性の利用上限を据え置いた。このまま29日に銀行が営業を再開すれば、銀行は預金の引き出しに応じることができず、破綻に追い込まれる恐れが高まった。こうしてギリシャ政府は7月6日までの銀行休業と資本規制の導入を決断した。
2013年の銀行危機時に資本規制を導入した同じユーロ圏のキプロスでは、預金引き出しや海外送金の制限や報告義務が課せられた。資本規制が長期化すれば(キプロスの例では導入から解除まで約2年)、幅広い経済活動に影響が出てくる。
デフォルトや銀行休業による混乱は、国民投票を控えるギリシャの国内世論にショック療法として働く可能性がある。国民投票の実施表明前に行われた最新の世論調査では(国民投票の実施表明後の世論調査はまだ公表されていない)、57%が債権者との合意に賛成、29%が反対、14%が態度未定(Alco/Proto Thema調査)や、47.2%が合意に賛成、33.0%が反対、18.4%が態度未定(Kapa/To Vima調査)で、交渉期限が迫るなかでギリシャ国民も合意支持に傾きつつあった様子が窺える。
ただ、5日の国民投票での設問は「債権者側の求める財政再建策を受け入れるかどうか」の二者択一で、ギリシャ国民の多くが希望するユーロ圏残留の是非を絡めたものではない。また、与党が受け入れ拒否を呼び掛けており、投票の結果は予断を許さない。
ギリシャの脅しはEU側には通用しない
債権者側の財政再建策の受け入れを拒否する投票結果となった場合、ギリシャ政府は民意を盾に改めて債権者に対して財政再建策の再考を求めるとみられるが、債権者側がこれに応じる可能性は低い。追加支援に関する協議は完全に決裂し、ECBは銀行への流動性支援を打ち切る可能性がある。
この場合、ギリシャが自力で銀行救済費用を捻出するのは困難で、結局EU諸国の支援を仰ぐことになるか、独自通貨の発行などで銀行救済資金を捻出する可能性がある。前者の場合、紆余曲折の末に緊縮受け入れに舵を切ることになる一方、後者の場合はユーロ離脱への第一歩を歩み始めることを意味する。
債権者側はギリシャのデフォルトや国民投票の結果が受け入れ拒否となっても、まずはギリシャのユーロ残留を前提に努力する方針を表明している。ただ、財政再建策の再考を求めるギリシャ側の強硬姿勢が続けば、債権者側も態度を硬化させ、離脱容認に傾いていくことも予想される。
そもそも、EU条約にはEUからの離脱規定はあるが、ユーロ圏からの離脱規定は存在しない。EU離脱規定を援用するのであれば、原則として一方的な離脱や離脱の強制はできない。つまり、ギリシャ国民がユーロ残留を希望する限り、デフォルト後もギリシャがユーロ圏に居座ることも可能だ。ただ、離脱規定が存在しないこともあり、本当に居座ることが可能か、どういう手順で離脱を進めるのかは不透明だ。
逆に投票で受け入れ賛成派が多数を占めた場合、ギリシャ政府は財政再建策の受け入れに傾くとみられるが、与党内の強硬派がこれに反発し、政権が崩壊する可能性が高い。この時、支援継続派が挙国一致内閣を組織できれば協議はそのまま継続するが、それが出来なければ議会の解散・総選挙が必要になる。混乱の末に解散・総選挙となった場合、支援継続派の新政権が誕生する可能性が高い。だが、新政権が発足するまでの1カ月半から2カ月程度は協議が中断し、ギリシャの経済疲弊と財政悪化が一段と進むことになる。