世界は新型コロナウイルス騒動一色ですが、人類に対する脅威はコロナウイルスだけではなかった。英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)が人類が地球温暖化を促進する化石燃料汚染を激減させたとしても、世界の砂浜海岸線の3分の1以上が2100年までに消滅する可能性がある。沿岸の国々の観光産業はこれにより、大打撃を受ける恐れがあるとの論文です。今後、さらに発生するだろう新型ウイルス、地球温暖化、今後の半世紀は悩まされ続けるでしょう。進歩は時として、人類を後退させることがあり得ると考えるべきです。
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気候変動と海面上昇が現状のまま進行すると、世界の砂浜の半数が2100年までに消滅するとの研究論文が発表された。
英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された論文によると、人類が地球温暖化を促進する化石燃料汚染を激減させたとしても、世界の砂浜海岸線の3分の1以上が2100年までに消滅する可能性がある。沿岸の国々の観光産業はこれにより、大打撃を受ける恐れがあるという。
論文の筆頭執筆者で、欧州委員会(European Commission)共同研究センター(JRC)の研究者、ミカリス・ブドゥカス(Michalis Vousdoukas)氏はAFPの取材に、「観光産業以外にも、砂浜は沿岸を暴風雨や洪水から守る最初の手段となっており、砂浜が消滅すれば異常気象の影響が強まる可能性が高い」「人類はこれに備える必要がある」と指摘した。
米国など一部の国はすでに、広範囲に及ぶ防御体制の確立を計画している。一方、大半の国では実行不可能または費用を賄えない、もしくはその両方が理由で、そのような大規模な工学的計画は実施できないのが現状だ。
今回の研究結果によると、最も深刻な影響を受ける可能性のある国はオーストラリアで、今後80年で白い砂浜の海岸線が1万5000キロ近く流失する恐れがある。次いで影響が大きい国は、カナダ、チリ、米国の順。砂浜海岸線の大半を失う10か国にはこの他、メキシコ、中国、ロシア、アルゼンチン、インド、ブラジルが含まれている。
世界の海岸線の3分の1以上を占める砂浜は、その多くが人口密度の高い地域に位置している。だが、新たな建造物、海水面上昇、ハリケーンや台風などによる高潮、河川でのダム建造による堆積物の減少などによって砂浜海岸線が侵食され、人々の暮らしやインフラが脅かされている。
■2100年までに49.5%が消滅
ブドゥカス氏ら研究チームは砂浜の消失速度を評価するため、1984年以降の30年分の衛星画像データに海岸線の動態を当てはめた。研究チームはこの画像データを用いて、二つの異なる気候変動シナリオの下で発生する今後の浸食状況を予測した。
RCP8.5と名付けられた「最悪のシナリオ」では、炭素の排出が弱まることなく続き、地球自体が人間の活動とは無関係に、大気中の温室効果ガス濃度を引き上げ始めることが想定されている。これは例えば、永久凍土からの放出などが考えられるという。
RCP4.5のシナリオはRCP8.5よりも深刻度は低く、人類が地球温暖化を約3度に抑えることを前提としている。だが約3度というのは、2015年に採択された地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の目標である「2度未満」をはるかに上回っている。
RCP8.5のシナリオでは、2100年までに世界の砂浜海岸線の49.5%が消滅するとされているが、距離にすると13万2000キロ近くに相当する。また、2050年までに4万キロ分の砂浜海岸線が失われると考えられている。
RCP4.5のシナリオは実現可能性が高まっているが、これにおいても2100年までに9万5000キロに及ぶ海岸線から浸食により砂が流されることによって、海岸線の大半が向こう30年以内に消失すると考えられている。