新型コロナウイルスの対応の拙さからドナルド・トランプ大統領の再選に黄色信号です。巻き開始を図るため、今後支持率を睨み、中国に対して強硬に出るはずです。又民主党バイデン氏も息子の中国企業からの利益供与疑惑を上手く説明できなければ、失速して4年前のヒラリークリントン氏と同じ道を歩みます。いずれにしても世界では中国の影響力が拡大し、今や米国大統領選挙にも影響を与えられる地位にいるようです。
以下抜粋コピー
「戦時大統領の権威」を示すために(?)マスクをしなかったトランプ大統領もここにきてマスクをし始めた(記者団の前ではマスクはしていない)。
下院のナンシー・ペローシ議長(民主党)は、なぜトランプ氏はマスクをしないのかと記者に聞かれて、「虚栄心(Vanity thing)でしょ」とコメントしている。
新型コロナウイルスを「ブラック・エレファント」(Black Elephant)と呼んだのは2012年の共和党大統領候補に指名されたミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)だ。
ブラック・スワンとホワイト・エレファントとを合体させた造語で環境保護団体などがしばしば使う。想像を絶するような巨大なインパクトを与える現象を指す。
その「ブラック・エレファント」が、じわりじわりとトランプ大統領をコーナーに追い込んでいる。
強気な言動とは裏腹に、トランプ氏は眠れぬ夜が続いているに違いない。
怒りの矛先は、状況が一向に改善しないことを批判するメディアと民主党に向けられている。また「発生源」と信じている中国にも向けられている。
5月11日の記者会見で米国の感染死者数が世界一になったことを取り上げた中国系米国人女性記者(中国福建省厦門生まれの帰化人)がまず血祭に挙げられた。
「そんな質問は(記者の母国の)中国に聞け」
同僚女性記者がさらに追及すると、突如、記者会見を一方的に打ち切ってしまった。
頼りにする感染防止対策チームの長、アンソニー・ファウチ国立エネルギー感染症研究所長には、大統領が旗を振る経済活動再開について「ちょっとした感染者の増加が感染爆発につながる」と警鐘を鳴らされてしまった。
科学軽視のトランプ氏は専門家たちから白い目で見られている。
ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長からは、マイナス金利の導入の可能性を明確に否定されてしまった。
ウイルス対策費用を賄うため国債発行は膨張、債務残高は25兆ドルを初めて突破してしまった。
トランプ氏としてはマイナス金利政策を導入し、利払い負担を少しでも減らすのが狙いのようだが、ここでも専門家から「ノー」。
大統領よりも専門家を信頼するのは米国民だけではない。金融からも株価からも信頼されていない。
大統領の口車に乗って経済再開に踏み切った南部各州では感染者や死者が増加、早くもウイルスの「第2波」の兆候を見せている。
「フリン起訴取り下げは法の支配脅かす」
その警戒から株価は下がり出した。そのタイミングを見計るように、トランプ大統領が一番苦手な人物が政治の表舞台に躍り出てきた。
バラク・オバマ前大統領が満を持して登場したのだ。
オバマ氏は5月7日夜、オバマ政権で要職についていた元高官と電話会議を行い、以下のような発言をした。
会議は非公開だったが、その直後に発言はリークされた。リークは織り込み済みだった。
「最高の政府であっても(新型コロナウイルスへの対応では)失敗する可能性はある」
「だが政府が『これは自分にとってどんな利益があるか』とか『他人のことはどうでもいい』といった考え方に動かされていれば、その対応は間違いなく混沌とした大惨事になる」
「世界的な危機に対応できる強固な政治的リーダーシップが今ほど必要なことはない」
「秋の大統領選では特定の個人や政党と戦うのではなく、自己中心的で分断を受け入れ他人を敵とみなす長期的な傾向と戦うのだ」
オバマ氏のトランプ氏への批判は新型コロナウイルスへの稚拙な対応だけではない。
いや、むしろ米民主主義に対するトランプ氏の破壊行為に対する憤りの方が大きかった。
トランプ政権のロシア疑惑に関する偽証罪で公判中の元大統領補佐官(国家安全保障担当)のマイケル・フリン被告について、ウィリアム・バー司法長官が連邦地裁に起訴取り下げを申し立てたのは5月8日。
トランプ大統領がバー司法長官に命じたのは火を見るより明らかだった。
トランプ氏は5月7日、記者団に「フリン氏は無罪だ。オバマ政権の標的にされた。米史上かってないことだ」とコメントした。
これにオバマ氏は憤りをぶつけた。
「この決定は司法省の高潔さを傷つけるものだ。専断的な国家権力を排し、権力を法で拘束するという、われわれの基本的な原理である法の支配が今脅かされている」
トランプ氏はこのオバマ氏の発言に直ちにツイッターで反論した。
「オバマ氏と『スリーピー・ジョー』(バイデン氏のこと)がホワイトハウスにいた時に起きた豚インフルエンザ禍で何をしたか」
「解決策の手がかりすら見つけられなかったではないか。落第点。世論調査(の結果では支持率)は最悪だった」
「そこへいくと、わが政権の新型ウイルスへの対応は見事なもので、特に中国との人の往来を初期の段階で禁じた措置は高く評価されている」
ちなみに豚インフルエンザが発生したのは2009年、オバマ氏が大統領に就任した直後。終結した2010年までの1年間に死亡した感染者数は1万2469人だった。
今回の新型ウイルスでの死亡者は発生後3か月で8万2000人に達している。
オバマ側近、バイデン陣営に全員合流
ロサンゼルス・タイムズのベテラン政治記者でコラムニスト、ドイル・マクナマス氏はオバマ氏の発言についてこう解説している。
「退任後、トランプ氏への批判を避けてきたオバマ氏が、ついにリングに上がった。しかもグラブを外し、素手で戦う覚悟だ。どっちが先に倒れるか、真剣勝負に出た」
「これにより秋の大統領選に向けた選挙の流れは大きく変わってきた。オバマ氏はこれまでバイデン氏を民主党大統領候補に推すことを控えていた。一部のバイデン支持者は苛立ちすら見せていた」
「そして今、バイデン氏を正式に支持した。トランプ氏が、そうさせるだけの理由(法の支配の原則を破ったり、パンデミック阻止に失敗するなど)をいくつも提供したからだ」
オバマ氏はすでに電話でバイデン氏と話し合い、戦略を授けたり、元側近たちにバイデン陣営に馳せ参じるように要請しているという。
オバマ氏が正式にバイデン氏を支持したことにより黒人票や若者の票は迷うことなくバイデン氏に流れる。
リベラル派若者層のシンボル的存在のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州選出)はオバマ発言直後にバイデン支持を打ち出した。
マクナマス氏はさらにこう指摘する。
「トランプ対バイデンの戦いではまだまだトランプ氏も勝つチャンスはある。しかしトランプ対オバマ・バイデンとなると、トランプ氏が勝つのは極めて難しくなるだろう」
「2018年の世論調査ではオバマ氏の方が良い大統領だと答えた有権者は56%、これに対しトランプ氏と答えた有権者は37%に過ぎなかった」
オバマ・バイデン政権を8年間取材した米主要メディアのジャーナリストR氏は筆者にオバマ発言の背景についてこう語る。
「新型コロナウイルス禍がなければ、オバマ氏としてはバイデン支持は8月の党大会までギリギリ待つつもりだった」
「ところが新型コロナウイルス禍でバイデン氏は自宅の地下室からオンラインで演説しかできなくなった」
「民主党党大会ですらオンライン大会にせよ、とか、野球場などを会場にして参加者と参加者の距離を保つソーシャル・デスタンシング党大会にすべきだ、といった声が出ている」
「民主、共和両党とも新型コロナウイルス禍で選挙資金集めも厳しくなっている。オバマ氏の支持表明は集金力でもバイデン氏にはありがたいはずだ」
「オバマ氏がこの時点で動いた理由はもう一つある。それは民主党が狙う上院での過半数獲得工作だ。あと3議席取れば可能になる」
「これまで安全圏にいた共和党現職上院議員が今回の新型コロナウイルス禍の影響もあって民主党新人候補に激しく追い上げられている。オバマ氏は民主党候補へのテコ入れに今後積極的に動くだろう」
共和党現職上院議員、再選危うし!
最新の世論調査結果はR氏の読みを数字で表している。
再選を目指す共和党現職上院議員でこれまで安全圏にいるとされてきたのは、モンタナ、アイオワ、コロラド、アリゾナ、ノースカロライナ、メーンの6州選出議員だ。
ところが新型コロナウイルス発生後の3か月で事態は一変している。
6州のうち、モンタナ州のスティーブ・ダインズ、アイオワ州のジョニ・アーネスト両議員は民主党候補に差をつけられて苦戦。
ダインズ氏の対抗馬はスティーブ・バロック同州知事で、現在7ポイントの差をつけられている。
モンタナ州もコロラド州も民主党候補は現元州知事。世論調査では、新型コロナウイルス禍への対応では、有権者は大統領や上院議員よりも知事の方に信頼を寄せているという結果が出ている。
コロラド州のコリー・ガードナー、アリゾナ州のマーサ・マクサリー両議員は民主党候補とデッドヒート。
ガードナー氏の対抗馬はジョン・ヘッケンルーパー元州知事。ガードナー氏は元州知事に20ポイント近く差をつけられている。
ノースカロライ州のトム・ティリス、メーン州のスーザン・コリンズ両候補も接戦を強いられている。
ハート・リサーチ社の最新の世論調査ではバイデン氏はこれら6州でトランプ氏を9ポイント差でリードしている。