適温相場なのか米国一強相場なのかは分かりませんが、悪材料が出ても、すぐに織り込む、高値波乱の強気株式相場が続いています。日経平均も、来年3月には3万円に到達すると宣言している証券会社もあるほどです。『2000年のITバブル崩壊後の景気後退』を参考にすべきだという専門家もいます。筆者もしばらくは高値波乱が続く気がします。中小型の好業績よりも、銀行などの低位大型株に妙味がありそうです。いずれにしても、景気後退は必ず、やってくる。備えあれば患いなしです。
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現在のマーケット状況は、『2008年のリーマンショックの景気後退』の前というよりも『2000年のITバブル崩壊後の景気後退』の前の局面に類似しているということがわかりました」とJ.P.モルガン・アセット・マネジメントの前川将吾氏は説明する。「日本株はこれから上がるのか、下がるのか」。個人投資家にとって大いに関心があるところだろう。
しかし、その問いに対する答えは二分するようだ。直近の米中貿易戦争やトルコ・ショックなどのニュースを聞き、「もう世界のマーケットは終わり」と語る投資家もいれば、日本企業の想定ドル・円レート以上の円安傾向などを見て、「日本株はまだ上を狙える」と考える投資家もいる。
これらに対し前川氏は、「米中貿易戦争やトルコ・ショックの実体経済への影響は、実際には限定的です。また足元のドル高・円安はドル高一強の裏返しにすぎず、対ドルで円安が進んだから日本株がただちに上昇する、とは言えない状況です。むしろ日本株を考えるうえでは、円の名目実効レートを見た方が良いでしょう」と話す。
前川氏のこのような見方の基となっているのは、過去の金融市場や経済統計のデータだ。「投資で成功するためには、直近のニュースや足元の相場から短絡的な判断を下すのでなく、データに基づいて論理的に金融市場や経済を分析することが何よりも大切なのです」と話す。
前川氏がデータを重視して投資判断をする理由は何だろうか。
「短い期間で見ると、マーケットはランダムに上下に振れているように見えますが、長い期間を経ると必ず平均値に回帰します。歴史は繰り返すと言われるように、実体経済やマーケットにおいても上がったものは下がり、下がったものは上がるという動きを繰り返しているのです。たとえば、米国の失業率のデータを見ると、その動きが顕著に表れています」
現在、米国の失業率は低下傾向にある。2009年に10%まで上昇した失業率は、現在3%台後半と、歴史的な低水準になっている。
「当然ながら、失業率が0%を割り込むことはありません。過去の歴史を振り返ると、最低水準まで失業率が下がれば、その後反転して失業率の上昇、景気後退がやってきています。その点で今は、これまで成長を続けてきた米国経済も終盤戦、すなわちロスタイムにさしかかっていると言えるでしょう」
米国の景気拡大が最終局面にさしかかっているとすれば、そのロスタイムがどれくらいあるのかが気になるところだ。
「米国の景気後退前に点灯するサインとして、注目すべきデータがあります。その一つが『米国債の長短金利差』です。一般的に10年金利は2年金利よりも高いのですが、これが逆転するとその約1年後に景気後退が起こっています。現状ではこの現象は起きていませんが、過去のデータを基に判断すると、2019年7月頃にサインが点灯し、その後1年ほどで景気後退すると予想することができます。もう一つは、『ISM製造業景況感指数』です。過去には、この指数が50を割り込むと景気後退が起こっています」
事前のサイン点灯までの約1年間とサイン点灯後の約1年間を合計すれば、景気後退まであと2年ほどの「ロスタイム」があることになる。そこで採るべき投資戦略とは何か。
「それも、過去の歴史から学ぶことができます。過去に終盤戦でどのようなことが起こっていたかを分析した結果、現在のマーケット状況は、『2008年のリーマンショックの景気後退』の前というよりも『2000年のITバブル崩壊後の景気後退』の前の局面に類似しているということがわかりました」と前川氏は説明する。
「ゴルディロックス(適温相場)」「米国一強」「IT・テクノロジー相場」などのポイントが、現在のマーケットと類似している点だという。さらに興味深い分析もある。
「再確認ですが、データによると景気後退まであと2年前後です。今回の局面がITバブル期に似ているとすれば、2年のうち前半の1年と後半の1年で、多くの資産の動きが真逆になる可能性があると見ています。
ITバブル崩壊後の景気後退2年前から1年前までは、米国の小型やグロース、モメンタム株が優位で、バリューやクオリティ、低ボラティリティ株が劣後していますが、景気後退1年前から景気後退入り直前になるとこれらが逆転します。この現象は世界株式の業種別のリターンにも共通しており、『2年前から1年前』の1年間では景気に敏感に反応する『情報技術(IT)』や『一般消費財』が優位ですが、景気後退1年前から景気後退入り直前になると、景気に左右されづらい『生活必需品』や『ヘルスケア』が優位となる逆転現象が起きていました」