政府は時短に応じ一定の基準をクリアした飲食店に企業の規模にかかわらず一律6万円支給していたので、恩恵を受けられる飲食店と受けられない飲食店との格差・不公平が拡大してしまいました。更に上手く業態変更したお店は今後売り上げが伸びますます成長するでしょう。気になるのは緊急事態でも感染者が減らないケースです。この場合には飲食店でのコロナ感染説が後退し、緊急事態宣言継続中でも一律6万円支給が停止され可能性があります。支援拡大は命を守る病院へと移行するはずです。いずれにしても、内閣支持率が急落すると、態度を一変させる菅首相に明るい未来を託すのは無理。 悲惨な未来も想定しないといけない時期です。
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東京都は今回の緊急事態に際して、「午後8時までの時短及び午後7時までの酒類提供」に応じた場合における協力金(1店で1日6万円)の支給対象を、中小の事業者だけでなく大企業にも拡大する方針を打ち出した。
1月8日、1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に緊急事態宣言が発令された。同13日には栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県が追加された。東京都以外の2府8県は、政府が8割を補助する協力金を、企業の規模にかかわらず一律6万円支給していた。
東京都が大手外食チェーンにも協力金を出すに至った経緯を探った。
●他店で飲んだ人が午後8時以降に集まるお店
居酒屋「屋台屋 博多劇場」「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」などを手掛ける、東証1部上場の一家ダイニングプロジェクトでは、1月8日から要請通りの時短に応じていた。
ところが、同社の武長太郎社長が「協力金が出ない状況であっても、営業を行わない限り、300名以上の社員と、800名を超えるアルバイトメンバーはもちろん、パートナー企業や、飲食店経営に携わるサプライヤーの雇用を守ることができない」と、公式Webサイトで発表。翌9日から70店中42店(東京30店、千葉12店)で営業を再開した。残りの店舗はほぼ休業している(1月18日時点)。
●グローバルダイニングの社長が異例の声明
和食「権八」やイタリアン「ラ・ボエム」などを東京都心部を中心に37店展開する、東証2部上場のグローバルダイニング。同社は、カテゴリー上は中小企業に入るが、1月7日に長谷川耕造社長が「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられない」などと、自らの考えを公式Webサイトで発表。緊急事態が宣言されても、商業施設にある店舗を除いて、ほぼ通常通り営業を行っている。
「権八」西麻布店は、小泉純一郎元首相と米国のブッシュ元大統領が、在職中に会談した高級居酒屋として知られる。
長谷川社長の主張は、次の通りだ。
(1)現在「緊急事態」にあるのか。日本における新型コロナの死者数は米国の約40分の1と極端に少ない。20年10月までの総死者数は、インフルエンザの感染が抑えられたため、19年と比べて約1万4000人も減少した。
(2)ロックダウンを徹底している国々で感染が下火にならず、「時短」や「休業」が効かないのは世界規模で証明されている。
(3)冬にウイルス感染症が増えるのは自然の摂理。医療崩壊とおっしゃっている国や自治体の関係者、感染症専門家の方々は何の準備もしていなかったのか。
(4)飲食で午後8時までの営業では事業の維持・雇用の維持は無理。
(1)~(3)について、日本で感染拡大していると言っても、1日の感染者数とされるPCR検査陽性者数は、最大で7844人(1月8日)。それに対して、米国では連日約20万人が感染している。人口比で見て、明らかに日本は新型コロナがあまり流行っていない。長谷川氏でなくても、日本の医療体制がどうしてここまで脆弱(ぜいじゃく)なのか、疑問を持つ人も多いのではないだろうか。
(4)についても補足しよう。例えば、東京・西麻布にある「権八」は250席で、同じく都内にある新宿御苑と銀座の「ラ・ボエム」はそれぞれ120席と96席を有している。同社が運営するのは大型店が主流(全てではない)。1日6万円が支援されたとしても、時短営業をして維持できないのは明らかだ。
顧客の入りは、「店にもよる。現時点では正確に分からないが、SNSの投稿を見ても悪くないとみている」(同社・広報)。悪くないどころか、長谷川氏の考え方に共感した人が集まっているのか、銀座や白金の「ラ・ボエム」などは、ウェイティングが出るほどの大盛況である。
●サイゼリヤは「ふざけんな」
さらに、要請に応じて時短している企業も、憤懣(ふんまん)やるかたないという感じだ。1月12日に西村康稔経済再生担当大臣が「ランチもリスクが低くない」と、国民に夜間のみならず日中も不要不急の外出と外食を控えるよう要請した。サイゼリヤの堀埜一成社長は、同13日の決算発表の席上で「昨日またランチがどうのこうのと言われましてね。ふざけんなよと」と語気を荒げ、大手への協力金の拡充を訴えた。
なお、サイゼリヤは食事用マスクを考案するなど、政府の感染防止策に外食で最も協力的な企業の1つだ。自らの業績悪化を、景気や災害、行政など人のせいにする企業では、断じてない。そのサイゼリヤの社長が怒るとは、よほどの事態と考えるべきである。
中華「紅虎餃子房」や和食「葱屋平吉」などを国内に355店展開する、際コーポレーションでも動きがあった。1月13日、和洋中の料理人と店長の代表者が、時短に応じた外食大手の店舗にも協力金を支給するよう、陳情のために東京都庁を訪れた。
同社の中島武社長は、Facebookにて「営業補償は、都内にある各店全てに支給されるのだと人々は(誤って)認識している。(2020年の緊急事態宣言時など)今までも、(1事業者につき)1店舗しか対象にならず、今回は対象外ーー? 大手飲食店にも平等な対応をしてほしい」などと、心情を吐露。「同様な飲食企業の方、各自要望書を持参してお願いして下さい。共に参加も歓迎致します」と、呼び掛けていた。
当日、都庁には、Facebookの書き込みに賛同した東京都議会議員・上田玲子氏、目黒区議会議員・白川愛氏も同行した。
このような中島社長と際コーポレーション社員の行動も影響して、中小だけでなく大手にも等しく1店舗当たり1日6万円を支給するという小池知事の決断につながった。
「大手飲食店は一つ一つの店の集約で成り立っております。其処には従業員が居り、家賃も大家さんに払っております。私達は反旗を掲げているのではありません。自分達の生活を守る為に懸命です」(中島武氏Facebookより)というのは、東京都に基盤を持つ外食大手の本音だろう。
●大型店にとっては「焼け石に水」
このように、東京都では支援の対象から弾かれた大手外食企業が「このままでは倒産してしまう」という強い危機感を抱いた。そして、時短要請に応じない企業が出始めた。時短要請に応じているところからも窮状を訴える動きがあったことから、「大手にも支給へ」と舵を切った。
コロナ禍が始まって1年になるから、大手といえども余裕がなくなってきている。大量閉店を決定した企業もある。
「魚民」や「白木屋」などを展開する大手居酒屋チェーンのモンテローザは、1月15日に都内337店のうち、約2割にあたる61店の閉店を決定した。
大庄のメガフランチャイジーとして、関東に「庄や」「日本海庄や」など60店を展開するかんなん丸。同社は、緊急事態の期間中、全店休業。1月13日に約半数の27店を閉店し、80人の希望退職者を募集する決定をしている。
しかしながら、こうして緊急事態宣言下で時短に応じた飲食店に対して、店舗規模や立地に関係なく、1店につき1日6万円を一律に支給するようになったからといって、「万事めでたし」とはならない。
前出・グローバルダイニングのように、家賃が高い東京都心部で100席以上の大規模店を展開していれば、焼け石に水の状態だ。
大阪、名古屋、福岡などの大都市の中心部にある大型店も、東京ほどではないにしても、非常に苦しい。
大都市中心部の大型店では、この程度の支援しかないのであれば、時短しない可能性がある。政府は要請に従わない事業者への罰則や店名公表を行っていく方針だが、適正な支援をせずに懲罰を与えたらどうなるか。裁判を起こされた場合、勝てるのだろうか。最高50万円程度の罰金ならば、倒産するよりマシと考えて営業を継続する店も出て来るだろう。
●協力金がもらえる店がうらやましい
同じ東京都でも、北西部は森が深く、熊が出没する場所もある。例えば、山間部に近い家賃が安い場所で、夫婦2人でほそぼそと営業しているお店があったとしよう。1日の売り上げが1万円にも満たなくても、1日6万円がもらえてしまうのだ。内心、緊急事態を喜んでいる店も多いのが実態である。
こうした協力金には負の面もある。今まで仲良く事業を行っていた商店街の結束が、協力金のせいで乱れてしまったとの話も漏れ聞く。協力金をもらった飲食店を他の店主がうらやむせいだ。
今回の緊急事態は、医療崩壊を防ぐための措置である。感染経路については、1月6日に厚生労働省が発表した「第20回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の資料が詳しい。同資料には「東京では、感染拡大が続いており、年末まで人流の大きな低下がみられていない。東京では、飲食などの社会活動が活発な20~50代の世代の感染が多く、少なくとも昨年末までの感染拡大では、飲食をする場面が主な感染拡大の要因となり、これが、職場や家庭、院内・施設内の感染に繋がっているものと考えられる」と記されている。
当該資料がどこまで確かなエビデンスに基づいているのかは不明だ。しかし、政府や各自治体は、今回の緊急事態宣言で社会経済活動を幅広く止めるのでなく、感染リスクの高い「飲食」に絞って、対策を徹底することにした。
自粛の対象を飲食店に絞る一方、手厚い協力金を飲食店に準備して、「飲食店を狙い撃ちにした」という批判をかわすはずだった。
まさに「緊急」だったので仕方ない面はあるが、雑な制度設計からさまざまなほころびが出てきてしまった。今後は不平等感が出ないように、改善してもらいたい。
●どんちゃん騒ぎをする店がどれほどあるのか
ほとんどの人が1人で食べに行く、牛丼、天丼、カレー、セルフうどん、立ち食いそば、ラーメンのような店で、飛沫が飛び交って感染源になるとは考えにくい。そういった店にまで時短を求めるのは、やり過ぎではないか。
ファミレス、カフェ、回転寿司、ファミリー焼肉のような業態も、ほとんどが4人までの利用で、皆で深酒してどんちゃん騒ぎをするような店と思えない。
20年末、政府は5人以上の会食は飛沫拡散のリスクが高くなるとして、会食は4人までにするよう呼び掛けていた。それなら、5人以上のグループは入れないよう、飲食店に人数制限を呼び掛ければいいだけのように思える。
飲食店向け予約システムを手掛けるテーブルチェックは1月7~10日、1都3県の飲食関係者115人を対象にしたインターネット調査を行った。すると、「時短要請に応じる」と回答したのは全体の87.9%だった。「休業する」が6.0%だったので、合わせて93.9%になる。「応じない」は0.9%で、残りは「検討中」としていた。
実際、筆者の体感としても、午後8時以降に開いている店はとても少ない。
「当然、時短に協力する。デリバリー、テークアウトはそれぞれの販社が業態のニーズに合わせて考える」(コロワイド・広報)というのが、外食の標準的な対応ではないだろうか。
しかし、都心店・大型店が苦しくなり、郊外店・小型店が有利になるという格差が、どんどん開いてきている。都心店・大型店は限界に近づいており、外食崩壊はもう間近だ。
政府は、緊急事態の要請に従わない企業を処罰するための法整備を進めている。要請する企業に対して、政府の支援を義務付けるという内容もセットにしている。
しかし、支援の額に関して、現在のように不公平な状況が続けば、罰せられても営業を継続する事業者が出てくる。外食の大倒産時代を招き、失業者が街にあふれ、アルバイト先が消失する可能性もある。大学・専門学校の退学者も増えるだろう。しかも、世界で人気の「和食」産業の担い手を大量に失い、日本の文化的価値も低下してしまうのだ。