米連邦最高裁は29日、米ハーバード大などが黒人などの人種を考慮して入学者を選考していることは「法の下の平等」を定めた憲法修正14条に違反するとの判断を示した。最高裁は45年前の判決以降、人種差別を受けてきた黒人らへの格差是正措置として容認していた。大学入試や企業の採用で黒人ら人種的少数派の優遇枠を設ける措置はアファーマティブ・アクションと呼ばれ、1960年代以降のアメリカで、人種差別の是正を目的に導入されていた。 同様の是正措置を導入している大学や企業は多く、影響が広がりそうだ。
教育や雇用の機会の不平等を是正するため、就職や大学入学の際に黒人やヒスパニックといった人種的少数派や女性らを優遇する措置は「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」と呼ばれる。
2014年にハーバード大とノースカロライナ大チャペルヒル校を相手取った今回の訴訟で原告側は、アジア系の入学者が不当に抑えられ、人種差別だと主張した。大学側は差別を否定し、人種の考慮は多様性確保に必要だと反論した。
最高裁は1978年の判決で、大学が人種ごとに入学枠を割り当てることは違法としつつ、選考の要素の一つとして人種を考慮すること自体は容認していた。
是正措置には、保守派を中心に「白人への逆差別」との反発があった。現在、最高裁判事9人のうち6人を保守派が占める。違憲判断は、最高裁の9人の判事のうちロバーツ長官ら保守派6人による多数派意見だった。ロバーツ長官は大学が「能力ではなく、肌の色が基準になるとの誤った結論を下してきた。憲法はそのような選択を容認しない」と指摘。リベラル派のソトマイヨール判事は「長年の判例と大きな進展を後退させることになる」と懸念を示した。 昨年6月には、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判断を半世紀ぶりに覆した。