日本で賃金が上昇しない原因は、雇用流動性の低さにあります。日本では雇用を守ることを絶対視し、正規労働者は余程のことがない限り解雇できません。また、賃金を引き下げることも余程のことがないとできません。そのため、会社は、雇用調整がしやすく、低い賃金で済む非正規労働者を増やすようになりました。 その結果、4割近くが非正規労働者という状況になっています。これでは賃金が上がるわけがありません。日本人はまじめで主張をあまりしないので、安い給料でも文句もいわず働きます。経営者の視点で考えれば、安い給料で黙って働いてくれるのに、あえて給料を上げる必要性がありません。労働組合も雇用を守ることを最優先するため賃上げを強く求めませんから、日本の賃金は上がらないわけです。このような悪のサイクルからの脱出は優柔不断な岸田政権下では難しいかもしれません。
プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2021年版)」を作成した。調査対象会社3800社のうち平均年収が最も低いのは、中国・九州エリアを拠点とするスーパーマーケット3社の持株会社リテールパートナーズ(平均年収200万円)だった。
ワースト10社の年収平均は272.8万円
プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2021年度版)」を作成した。基にしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2020年9月期~2021年8月期、一部企業については、2021年9月、10月期の数値を使用)。データ抽出では、経済・金融データサービスの株式会社アイ・エヌ情報センターの協力を得た。
このうち平均年収が低い「ワースト500社」を集計したところ、いずれの企業も全上場企業の平均年収603万円(商工リサーチ・2021年7月公開「上場企業2459社 2020年度決算『平均年間給与』調査)を下回った。また、ワースト10社の平均年収は約272.8万円だった。
1位は山口県防府市に本社を置く会社
全上場企業のうち平均年収が最も低かったのは、リテールパートナーズである。中国・九州エリアを拠点とするスーパーマーケット「マルミヤストア」「マルキョウ」「丸久」を傘下に置く持株会社だ。
同社の広報担当者は「従業員12人のすべては子会社からの出向であり、そこからも給与を支給されている。実際の給与水準を反映した数字ではない」と話す。また、前年から64万円の減額になっていることについては「従業員数の増加によるもの」(同)とした。
2位は商品先物取引などを行う岡藤日産証券HDだ。同社は2020年10月1日、日産証券株式会社を子会社とする株式交換を行い、経営統合を実施した。同社の経営企画室は「統合に伴い、全従業員が連結子会社との兼務となり、給与については連結子会社で計上することとなった。これにより年間給与額は、半期分の数字となっている」と話す。
これまで平均年収は500万円台で推移している。来期は年間金額の発表になるため、今後はランキングから外れるはずだ。
新型コロナで観光業、旅行業は大ダメージ
ワースト500社のうち、前期比ダウンは329社。業種ではサービス業が86社と多い。その中で目立つのは観光や飲食に携わる企業だ。新型コロナの感染拡大が直撃した格好である。
「スパリゾートハワイアンズ」の常磐興産(37位)やエイチ・アイ・エス(252位)、クルーズ船の予約を行うベストワンドットコム(5位)などの旅行業は、業績の落ち込みが給与に反映された形だ。
京都ホテル(41位)、ワシントンホテル(59位)などの宿泊業も同様だ。また、ペッパーフードサービス(189位)、幸楽苑HD(300位)、ワイエスフード(4位)などの外食事業も従業員の年収ダウンが目立つ。
オリエンタルランドがまさかのランクイン
「東京ディスニーリゾート」を運営するオリエンタルランドも影響を受けている。
社員の平均年収は、708万円から451万円と257万円の大幅ダウンとなった。その結果、前回はランク外だったのが今回は487位にランクイン。
同社の広報部は「コロナ禍で、冬季賞与の削減、一時帰休導入および時間外勤務の削減等などの人事施策を行った」と話す。
冬季賞与は社員が7割減、テーマパークオペレーション社員は5割減だった。グループ全体の人件費総額をみると、294億円の減額(750億円⇒456億円)となっている。
今後の見通しについては「前年度と比較して制限の緩和が見込まれることから、増収となる見込みである」(同)という。他の観光業もこれに続くことができるか。
2年連続でワースト10だった企業は…
メガネ・コンタクトレンズの小売チェーン「メガネスーパー」を運営しているビジョナリーホールディングス(6位)は、4月末決算ということもあり、新入社員78名の1カ月分の給与を含めた平均額であることを明らかにしている。新入社員を除いた平均は452万円で、順位としては478位相当である。
警備事業のトスネット(前回2位⇒3位)、インバウンド手配旅行業のHANATOUR JAPAN(前回6位⇒7位)、不動産投資のファンドクリエーショングループ(前回4位⇒8位)、百貨店の井筒屋(前回10位⇒9位)は、2年連続でワースト10に入った。
各社が「有価証券報告書」で開示する従業員平均年収については、それぞれ前提条件が異なっていたり、注意書きが付いていることも少なくない。
少人数の平均額が開示される持株会社の場合は、変動幅が大きかったりする。金額だけでなく、その他の要因のチェックも必要である。