北朝鮮が完全な核放棄の意思を示していない段階で、制裁緩和や平和協定締結を議論することは早計との良識ある見方がある中、金融市場は緊張緩和に向け、リスクオンです。金融市場は相場を動かせれば、結果は二の次。只、リスクオンは円高に悩ませられてきた日本にとっては一先ず朗報でしばらくの間、つかの間の円安・株高が来るかもしれません。しかし、ヘッジファンドは大量にドル売りポジションを敷いています。これは夏に向け波乱要素で、株式市場が上に行くにしろ、下に行くにしろ、アルゴリズムに支配された波乱相場になりそうです。年金生活者にとっては春からの食品値上げの影響で、景気に関係なく、生活がきつくなってきていますが、物価上昇は一過性ではありません。外国人観光客急増などの影響で、ますます多岐にわたり国内物価は上昇するはずです。
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ヘッジファンドなど投機筋のドル売り持ちは過去7年で最大規模に膨らんでいる。米経済の勢いに陰りが見え、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ余地が限られるという兆候が高まってきたため、ドルは下落すると読んでいるからだ。
足元では米国債のイールドカーブが10年来で最もフラット化し、2─10年債の利回りスプレッドはわずか46ベーシスポイント(bp)に縮小。FRBの利上げ路線が既に経済にブレーキをかけている様子がうかがえる。
ただし問題は、他の主要国でも経済成長減速の兆しが出ていることにある。つまりドル以外の通貨も下げ圧力を受ける見込みで、ドルは投機筋が期待するほど大きく下落しないかもしれない。
今年を通じたFRBの利上げ回数が、広く予想されている4回ではなく3回にとどまったとしても、年内は利上げがなさそうな欧州中央銀行(ECB)や日銀、あるいは年内1回とみられるイングランド銀行(英中央銀行、BOE)に比べればずっと多い。
為替レートを左右する重要な要因の1つとみなされることが多い短期国債の利回り差が、ドル売り持ち戦略にそぐわないのも明らかだ。米独2年債の利回りスプレッドは300bp近くもあり、1989年以降で最もドルに有利な状況となっている。
これらすべてによって、なぜ最近数カ月間ドルがずっと実質横ばいで推移しているのか、そしてどうして投機筋がドル売り持ちでなかなか利益を得られないかが説明できる。
シカゴの先物市場のデータを見ると、投機筋のドル売り持ちは2011年8月以降で最も規模が大きい。ロイターと米商品先物取引委員会(CFTC)のデータで計算すると、主要通貨と新興国通貨に対するドル売り持ちは全体で272億ドル(約2.9兆円)相当に上る。
そのほとんどはユーロの買い持ちで計14万7463枚、228億ドル相当と過去2番目の高水準に達している。
一方、通貨と金利の取引を手掛けるヘッジファンドの第1・四半期の成績は振るわなかった。一因となったのは2月上旬にボラティリティが極端に高まり、相場のモメンタムが崩れてトレンドに追随する戦略が破綻したことだった。
ユーリカヘッジのCTA/マネージド・フューチャーズ・ヘッジファンド指数は3月に0.33%、第1・四半期全体では1.54%低下し、マクロ・ヘッジファンド指数の低下率はそれぞれ0.71%と0.4%になった。2つの指数とも、通貨取引が大きな部分を占める。
またユーリカヘッジのFX指数は3月に0.98%、第1・四半期に0.2%下がった。
主要6通貨に対するドル指数は1月中旬以来値動きが乏しく、88.5─91.0のレンジにとどまっている。
ではなぜ投機筋がドルを売り持ちにしているのかと言えば、アトランタ地区連銀の米経済予測モデル「GDPナウ」が第1・四半期の成長率を年率2.0%と算出しているからだ。3月初め時点では3.5%と見込まれていた。
最近の米国の雇用や消費者信頼感関連の指標は、予想に対する実績の下振れが進んでいる。シティグループがまとめているエコノミック・サプライズ指数は今月に入って大きく下がり、昨年10月以来の低水準になった。
それでも米国のエコノミック・サプライズ指数は依然としてプラス圏にとどまっているのが、ユーロ圏や英国、日本との違いだ。特にユーロ圏の同指数はここ数週間で急降下し、12年6月以来の低水準に沈んでいる。
こうした状況からは、ドル以外の主要通貨も上昇余地はそれほど大きくないことが読み取れる。そして相対的な評価でレートが決まる外国為替市場では、すべての通貨が同時に下落する事態はあり得ない。
そこでドル売り持ちは、危険の大きな賭けであることが証明されつつある。ドル安を伴わずに売り持ちの規模が拡大すればするほど、投機筋が白旗を上げてポジション削減に動く可能性は高まっていく。