monologue
夜明けに向けて
 

warai  


それはハジマーシュの妖術によって見せられている幻なのか現実なのかその場にいる者たちには判断できない。
すると天空のスクリーン上のどでかい蛇のような恐ろしい姿をした怪獣が一呑みにされそうな大きな口を開き、
「Hear I am、これでもわたしは存在していないのか」と問うがだれも応えることはできず、ただ阿鼻叫喚の中、泳げるものは泳ぎ、泳げない者はもがきもがいて沈んでゆく。
海底火山が噴火して溶岩が噴き上がる。すると今度は足元が揺れだした。地震も始まった。
ハジマーシュの奇妙な笑い声がオーホホホオーホホホオーホホホと響いている。だれも聴きたくない笑い声だった。
fumio


 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


abi  


幕府の上層部は森宗意軒が麒麟や龍を使うなどそんなことあろうはずがない。一揆側の流す偽情報と一笑に付したのだが
その時四郎ガ浜にものすごい波が打ち寄せ、みんな茫然としていると見たくはないなにかわけのわからないどでかい蛇のような怪獣が浮き上がってくる。一呑みにされそうな大きな口を開き、Hear I amと吼えた。それがどうやらポセイドーン(海龍王)らしい。とても人間に太刀打ちできそうにない。逃げるしかないがあたりに身を隠す場所がない。
一揆衆も幕府軍も海龍王のその恐ろしい姿にただガタガタぶるぶると震えるしかなかった。これまで戦っていた敵同士が抱き合い涙をこぼした。ハジマーシュに助けてくれと頼むと
ハジマーシュはニヤリと片頬で笑い、ポセイドーンに向かってウインクしてから「サンクス ア ロット」と感謝の言葉を述べた。するとどうしたことかほとんどの海の水を噴き上げる勢いで竜巻がポセイドーンを包んだ。どうなることかと十万の幕府兵と一揆衆は息を呑んだ。すると突然、海底火山までが爆発し始めたのである。それはもう阿鼻叫喚だった…。
fumio


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




ハジマーシュこと妖術アーティスト森宗意軒の名は山田風太郎の「魔界転生」シリーズでの活躍で現代日本の知識層には知らないものはないほど有名になったが
当時の日本はまだ社会が狭いので天草四郎の父益田甚兵衛好次(洗礼名:ペイトロ)によってプロデュースされた一揆の参謀のひとり森宗意軒は朝鮮へと渡航途中に船が難破し南蛮船に助けられ南蛮(オランダ)へと向かい西洋の知識を学んだ先進的進歩人であるという評判で持ち切りだった。妖術で伝説の龍虎、麒麟などという怪獣たちを使うという。ハジマーシュは四郎を乗せた麒麟に微笑みかけ「四郎ガ浜」に向かってエゲレス語で咆哮するように呼び掛けた。
「ポセイドーンよ、Would you like to come over hear please!」
すると俄かに波が騒ぎうねりだした。ゴーと巻き上がりなにかが天に向かってゆく。
人々はその恐ろしい光景にガタガタぶるぶると震えた。
fumio

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )