「ボク、この仕事をやめてブレーメンの音楽隊に入りたい・・・」
職場での会話です。
「どうして?」
と、聞くと、
「もしボクみたいな子供がいたらどう?」
と、逆に問われました。
仕事の上でちょっとしたつまづきがあり、彼が涙ながらに話すのです。
「それじゃさ、ブレーメンの音楽隊に入ったら、どんな楽器を受け持つの?」
「太鼓かな。ギターでもいいけど」
「その音楽隊に入って旅に出ちゃったら、おとうさんもおかあさんも寂しくなっちゃうぞ」
彼は目にいっぱい涙をためて、口びるをぎゅっとかみしめていました。

彼等と一緒にいると”世間の常識”って何だろうと、つくづく考えてしまいます。
正常、異常とは誰が決めたのでしょう。
多数決で決められたのが常識だとしたら、誰にも持てない感性をもった子は異常なのでしょうか。
”一芸に秀でる”
そんな才能の持ち、他の物事には興味を持たない、それは人間として特別扱いされなければいけない人間なのでしょうか。
少し違った考え方、見方をするだけで、彼等は子供の頃から特別扱いされ、多くの枠からはずされ、虐げられ、孤独に耐えてきたのです。

”いつも逃げ道を探している”
それが彼等に対する認識だそうです。
良いじゃないですか、逃げ道、隠れ場、言い訳。
それがなければ生きてこれなかったんです、彼等は。
分っているのならいくらでも逃がしてやりましょうよ。
だけど、彼等が自身の身を守るためにどうしても必要な、このどうしようもない世の中からの逃避は抑えなきゃいけません。
それが現実、現実と夢の世界は違うのです。
そこで生きていくのには自分で道を切り開くことも必要だということを知ってもらいたい。

ブレーメンの音楽隊にだって勝手には入れないんだぞ。
オーディションという試験があって上手に太鼓をたたけなけりゃ入れないんだぞ。
ギターを弾くのには楽譜やコードを覚えなきゃ演奏はできないんだぞ。
みんながガチャガチャ勝手に鳴らしているだけじゃ誰も聞いてくれないんだぞ。
もしまた失敗してお客さんに怒られたら君はどうするんだい?
今度は桃太郎になってサルやキジや犬をつれて、鬼が島にでもいくのかい?
強くないと鬼にが逆にやっつけられちゃうんだぞ。
そうじゃなくってさ、今君は上手に木が剪定できるじゃないか。
だったら、ここでもう少し頑張ろうよ。
そうしたらおとうさんもおかあさんももっと喜んでくれれるし、もっとおとうさんやおかあさんを楽にしてやれるんだ。
楽しいことはブレーメンなんて遠い国にあるんじゃない。
ここにだってたくさんあるんだ。
それを探しながら、これからも頑張っていこうな。
夕暮れ時のオレンジ色のグラデーションにつつまれ、涙がひとつぶぽとりとこぼれました。
職場での会話です。
「どうして?」
と、聞くと、
「もしボクみたいな子供がいたらどう?」
と、逆に問われました。
仕事の上でちょっとしたつまづきがあり、彼が涙ながらに話すのです。
「それじゃさ、ブレーメンの音楽隊に入ったら、どんな楽器を受け持つの?」
「太鼓かな。ギターでもいいけど」
「その音楽隊に入って旅に出ちゃったら、おとうさんもおかあさんも寂しくなっちゃうぞ」
彼は目にいっぱい涙をためて、口びるをぎゅっとかみしめていました。

彼等と一緒にいると”世間の常識”って何だろうと、つくづく考えてしまいます。
正常、異常とは誰が決めたのでしょう。
多数決で決められたのが常識だとしたら、誰にも持てない感性をもった子は異常なのでしょうか。
”一芸に秀でる”
そんな才能の持ち、他の物事には興味を持たない、それは人間として特別扱いされなければいけない人間なのでしょうか。
少し違った考え方、見方をするだけで、彼等は子供の頃から特別扱いされ、多くの枠からはずされ、虐げられ、孤独に耐えてきたのです。

”いつも逃げ道を探している”
それが彼等に対する認識だそうです。
良いじゃないですか、逃げ道、隠れ場、言い訳。
それがなければ生きてこれなかったんです、彼等は。
分っているのならいくらでも逃がしてやりましょうよ。
だけど、彼等が自身の身を守るためにどうしても必要な、このどうしようもない世の中からの逃避は抑えなきゃいけません。
それが現実、現実と夢の世界は違うのです。
そこで生きていくのには自分で道を切り開くことも必要だということを知ってもらいたい。

ブレーメンの音楽隊にだって勝手には入れないんだぞ。
オーディションという試験があって上手に太鼓をたたけなけりゃ入れないんだぞ。
ギターを弾くのには楽譜やコードを覚えなきゃ演奏はできないんだぞ。
みんながガチャガチャ勝手に鳴らしているだけじゃ誰も聞いてくれないんだぞ。
もしまた失敗してお客さんに怒られたら君はどうするんだい?
今度は桃太郎になってサルやキジや犬をつれて、鬼が島にでもいくのかい?
強くないと鬼にが逆にやっつけられちゃうんだぞ。
そうじゃなくってさ、今君は上手に木が剪定できるじゃないか。
だったら、ここでもう少し頑張ろうよ。
そうしたらおとうさんもおかあさんももっと喜んでくれれるし、もっとおとうさんやおかあさんを楽にしてやれるんだ。
楽しいことはブレーメンなんて遠い国にあるんじゃない。
ここにだってたくさんあるんだ。
それを探しながら、これからも頑張っていこうな。
夕暮れ時のオレンジ色のグラデーションにつつまれ、涙がひとつぶぽとりとこぼれました。