きのうの記事に、心子と花見に行ったとき爆発を起こした家のことを書きましたが、そのエピソードを書かせてもらいます。
その日の心子は、当時よくはいていた黒い革のミニスカートに、赤とピンクの横縞のセーターという装いでした。
心子は僕の腕に寄りすがり、彼女の胸の膨らみが腕に当たって思わずどきどきしたものでした。
花を愛でながら、ビールに焼き鳥を味わって、おしゃべりをしました。
心子はしょっちゅうナンパされる話をします。
その話ぶりがこれまた面白おかしいのです。
女性はそんなにナンパされるものなのかと思うくらいでした。
それだけチャーミングなのでしょうか?
桜をバックに写真を何枚も撮ったり、神社で甘酒を飲んだり、楽しいひとときを送りました。
日が暮れて、人通りも少なくなった川沿いの道を歩いて家路に向かいました。
そのとき突然、川向こうの民家で「ドーン!」と爆発が起きたのです。
真っ赤な火柱が天井をなめるように立ち上がり、家の中に人影が見えました。
「携帯!」
僕はとっさに声を上げましたが、あいにく二人とも携帯電話を持ち合わせていません。
ちょうど前方から来た人に心子は携帯を借り、119にかけました。
しかし通りすがりのため番地も不明で、場所の説明がうまくできません。
心子はやにわに携帯を僕に渡して走っていきました。
僕は川をはさんで火の手が上がる家に気を奪われながら、顔を出してきた近所の人に番地を聞いたりしました。
何とか消防署に場所が伝わったとき、心子はぐるっと迂回して橋を渡り、向こう岸の家にはせ着けました。
体が悪くて普段は走ることなんかできないのに。
ほぼ同時に、火は家人によって消化器で消されました。
「大丈夫だって!」
対岸で心子が叫びました。
(続く)