「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子との花見(1)

2006年04月03日 20時06分16秒 | 心子、もろもろ
 
 きのうの記事に、心子と花見に行ったとき爆発を起こした家のことを書きましたが、そのエピソードを書かせてもらいます。

 その日の心子は、当時よくはいていた黒い革のミニスカートに、赤とピンクの横縞のセーターという装いでした。

 心子は僕の腕に寄りすがり、彼女の胸の膨らみが腕に当たって思わずどきどきしたものでした。

 花を愛でながら、ビールに焼き鳥を味わって、おしゃべりをしました。

 心子はしょっちゅうナンパされる話をします。

 その話ぶりがこれまた面白おかしいのです。

 女性はそんなにナンパされるものなのかと思うくらいでした。

 それだけチャーミングなのでしょうか? 

 桜をバックに写真を何枚も撮ったり、神社で甘酒を飲んだり、楽しいひとときを送りました。
 

 日が暮れて、人通りも少なくなった川沿いの道を歩いて家路に向かいました。

 そのとき突然、川向こうの民家で「ドーン!」と爆発が起きたのです。

 真っ赤な火柱が天井をなめるように立ち上がり、家の中に人影が見えました。

「携帯!」

 僕はとっさに声を上げましたが、あいにく二人とも携帯電話を持ち合わせていません。

 ちょうど前方から来た人に心子は携帯を借り、119にかけました。

 しかし通りすがりのため番地も不明で、場所の説明がうまくできません。

 心子はやにわに携帯を僕に渡して走っていきました。

 僕は川をはさんで火の手が上がる家に気を奪われながら、顔を出してきた近所の人に番地を聞いたりしました。

 何とか消防署に場所が伝わったとき、心子はぐるっと迂回して橋を渡り、向こう岸の家にはせ着けました。

 体が悪くて普段は走ることなんかできないのに。

 ほぼ同時に、火は家人によって消化器で消されました。

「大丈夫だって!」

 対岸で心子が叫びました。

(続く)
 
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