「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子、田舎娘を大熱演

2006年04月16日 18時20分57秒 | 心子、もろもろ
 
 一生懸命やることが何故か滑稽になってしまう心子ですが、こんな小話もありました。

 中学の学芸会、心子は村娘でワンシーンだけの端役でした。

 ダムに沈む村に向かって「おっとう、おっかあ……!」と叫ぶのです。

 心子はやり始めたら何でも徹底的にやります。

 夜も家でセリフの練習を積み、町中の店を探し回ってモンペを見つけてきました。

 学芸会の当日は、校庭の土を顔に塗って、どこから見ても田舎娘という出で立ちを作り上げました。

 他の生徒はジャージ姿でお茶を濁しています。

 本番、心子が舞台に飛び出してきました。

 観客は仰天しました。

「本物が来た!?」

 チビの心子が履いているのは大人用のモンペ、下半身ばかりデカくてまん丸に膨れ上がっています。

 会場は爆笑の渦に包まれました。

 でも自分の世界に入り込んでいる心子はちっとも気が付きません。

「おっとう、おっかあ……!」

 迫真の演技で涙にむせんで呼ばわり、グスッと鼻をすすり上げます。

 観客は床を踏み鳴らし、椅子をひっくり返さんばかりに笑い転げました。

 そして劇が終わり、心子はカーテンコールで両手を一杯に広げて挨拶をしました。

 一度やってみたかったというのです。

 大受けの拍手喝采でした。

 そのあとで、心子は友達から会場の反応を聞き、顔から火が噴き出しました。

 そのことがあってから、心子は何かにつけてこの件で友達にからかわれ、ネタにされたといいます。

 以来、学芸会のでき事は心子の“トラウマ”になり、今まで誰にも言えなかったそうです。

 でもやっと僕に話すことができました。

 “トラウマ”が癒えたのでしょう。

 よかったよかった。 (^^)
 
コメント
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