「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子が舞い降りた場所

2006年04月25日 21時55分18秒 | 心子、もろもろ
 
 心子は、Oホテルの最上階から飛び降りました。

 正面入り口の大きなひさしの上に落ちたのです。

 僕はその翌日ホテルを訪れた際、心子が身を投げた大体の位置を、ひさしの下から見上げながらホテルの人に聞きました。
(その下あたりの地面に白い花を供えました。)

 彼女が泊まったペントハウスはホテルの最上階ですが、その階だけ壁面が奥まっているため、地上から見上げると死角になってしまい、ペントハウスは下からは見えません。

 また、ホテル内に入って階上から入り口のひさしを見下ろそうとすると、各階の小さなひさしにさえぎられて見ることができません。

 もちろん、彼女が泊まった部屋に入って下を見ることもできません。

 心子が横たわっていた位置は、元々大まかだったうえ、地上からもホテル内からも、とても確認しにくいわけです。

 彼女が最後の夜を過ごした部屋の 階下の廊下の窓から見て、彼女が旅立ったのはこの辺りだろうと、今まで推定していた場所がありました。

 しかしその後、ホテルの内外を2往復ほどして見直してみた結果、その位置に2~3mのずれがあるようだと気付いたのです。

 また、第一発見者はホテルの向かいのマンションの住人と聞いていますが、実は発見者のマンションは、これまで思っていたビルの隣らしいことも分かりました。

 それまでホテルには何度も足を運んでいたのですが、ずっと思い違いをしていたことになり、何とも不覚なことでした。

 でもそんな僕に免じて、心子が別れを告げた場所を教えてくれたのかもしれません。

 彼女の最期のときに少しでも近づけた気がします。

 「マー君らしいね」

 そんな心子の微苦笑が見えるようです。
 
コメント
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