心子は、ホテルの最上階で最高級のペントハウスに泊まり、最後の夜を過ごして、夜明けに宙に舞ったのです。
現場のホテルを目の当たりにすると、やはり痛ましく、いたたまれない気持ちがこみ上げてきました。
でも、僕は彼女が「旅立った」のだと思っています。
苦しみも悲しみもない世界へ、ちょっと魂を休めに……。
彼女は、辛いことばかり多かったこの世で、力の限り生き抜いたのです。
本当に精一杯頑張った、よくやったね、と言ってあげたい……。
そして、苦しんだ分だけ、この次はいつの日かきっと、もう少し幸せな、生きやすい人生に、生まれ変わって来てほしいと思います。
ホテルの近辺には、色鮮やかなつつじが咲き乱れていました。
花々が咲いては枯れ、また再び華開くように、人も命を繰り返すのでしょう。
その時、また心子と逢えたら、なんて……。