(前の記事からの続き)
○喫茶店
世良が 美和子に話をしている。
世良の横には いつものカメラとケースが
ある。
美和子 「(驚いて) 記事を書くっていうこ
と? 世良さんが あたしとジュンの」
世良 「必要だと思うんだ、 移植の姿を 世に伝
えるのは」
美和子 「あたしは人のために やってるんじゃ
ないから……」
世良 「皆に理解されることは 美和子にとって
も 大切じゃないか?」
美和子 「うん、 そうだけど………」
世良 「きっと いいもの書くよ」
美和子 「……世良さんが そう言うなら……」
世良 「OKしてくれるか?」
美和子 「ジュンや若林先生にも 頼んでみる」
世良 「ダンケ、 恩に着る! (美和子の手を取
る) 『ある女医と 難病の弟、 生体肝移植の
愛と感動の記録』 ってとこだな」
美和子 「 “美人女医" にしてよ」
世良 「(笑) 言っとくけど オレは真実を訴え
る ジャーナリストだぜ (派手なフラッシュ
を焚いて 美和子の写真を撮る)」
美和子 「(照れ) モデル代、 高くつくよ」
世良 「まけてくれよ、 今度から 生体肝移植に
健康保険が 適用されることになったんだ
ろ?」
美和子 「よく調べてるね」
世良 「約一千万の費用の 七割が保険でまかな
われるんだから 朗報だ」
美和子 「今までは患者にとって 大変な負担だ
ったからね」
世良 「生体肝移植が 普通の医療として 認めら
れたってことだな」
美和子 「でも うちの病院では まだ行われてな
い…… ハードルはあるよ……」
(次の記事に続く)