「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

組織適合試験 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (10)

2010年08月09日 20時27分46秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○佐伯宅・ 淳一の部屋

  光の中で 全裸で寝ている 淳一とポチ。

  共に サングラスをかけている。

  電話のベルが鳴る。

  起き上がる淳一。
 

○同・ リヴィング

  電話が鳴っている。

  淳一が裸のまま ポチを抱え、 サングラス

  を外しながら来る。

淳一 「(受話器を取り) はい、 佐伯です。 

 ……ああ、 姉キ。 …… え、 何だよ、 けた

 たましい…… え、 診察?  外科の緒方先生

 ?」
 

○東央大病院・ ロビー

  美和子が喜び勇んで 電話をかけている。

美和子 「そう、 それで 適応と診断されれば

 手術してくださるって!  移植ができるの

 よ!」
 

○佐伯宅・ リヴィング

淳一 「え!? …… (しばし戸惑い) そうか

 …… いよいよ、 姉キが オレのなかに……

 …」
 

○東央大病院・ ロビー

美和子 「(感無量) 長かった、 これまで……

 …。 あした、 検査するからね」
 

○佐伯宅・ リヴィング

淳一 「…… うん …… 分かった …… うん 

 …… (複雑な想い)」
 

○東央大病院・ CT室

  緒方が 淳一にCT検査をしている。

  神妙な顔の淳一。

  美和子、 世良、 若林も 心配そうに見てい

  る。

世良 「(緒方に) 手術はどうですか?」

緒方 「体力的には 問題はないでしょうね」

世良 「美和子とジュンくんの 臓器の組織適合

 は?」

美和子 「肝臓移植はね、 赤血球のABO型や、

 HLAっていう白血球の型が 合わなくても

 あまり影響はないって 言われてるの」

緒方 「しかし 血液検査や肝機能検査、 リンパ

 球交差試験 〔*〕 の結果を見ないと 確実な

 ことは言えません」

 〔* リンパ球交差試験 …… ドナーのリンパ

   球と レシピエントの血清を 直接交ぜて、

   抗体の有無を調べる。 ダイレクトクロ

   スマッチとも言う。〕

美和子 「……… (不安と緊張)」

  世良、 美和子の肩に しっかり手を掛ける。

(続く)
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