(前の記事からの続き)
境界性パーソナリティ障害と若者の自殺に、
深い関わりがあることが 分かってきました。
東京都立松沢病院・ 林直樹医師の調査です。
自傷行為や自殺未遂で、 1年間に入院した 150人を診察したところ、
およそ60%が 境界性パーソナリティ障害でした。
その全てが 20~30代の若い世代でした。
退院後の追跡調査では、 患者の10%が 自殺で亡くなっています。
退院から2年以内に 再び自殺しようとした再発は、
うつ病や統合失調症では 35%、
それに対し 境界性パーソナリティ障害では 67%に上りました。
19才だった香枝子さんは、 境界性パーソナリティ障害と診断されていました。
高卒後、 第一希望の会社で 働き始めましたが、
3ヶ月後、 突然気分が落ち込み、 職場へ行けなくなりました。
休職し、 週に1度 精神科に通院していましたが、 症状は重くなる一方でした。
広い砂漠に たった一人 置き去りにされたような、 絶望感に襲われていたのです。
父親 「死なせてほしいと、 泣きながら叫ぶことがありました。
死にたいではなくて、 死なせてほしいと。
娘が眠りに就くまで、 妻はベッドに付き切りの 日々でした」
次第に感情のコントロールが できなくなっていった香枝子さん、
自殺で亡くなったのは 発病から1年後でした。
父親 「遺書には 『ごめんなさい』 って。
何も謝ることはないのにね ……。
これ以上生きていたら、 自分がどうなってしまうか 分からないということが、
心の中にあったんじゃないかと ……」
〔 NHK 「クローズアップ現代」 より 〕
(次の記事に続く)