(前の記事からの続き)
山室 「オーストラリアの施設では、 患者の 考え方の癖を改めて、
自分で感情をコントロールできるようにする カウンセリングなど、
心理療法を中心とした 治療を進めています。
この施設のスタッフが、 各地の医療機関で 研修会を頻繁に開いて、
地域の精神科医に 患者との接し方とか、 心理療法を教えているんです。
精神科医と臨床心理士が チームを組んで 治療に当たっています。
これまで2500人が 治療を受けてきて、
ほとんどが2年ほどで 自傷行為をやめ、 症状も落ち着いているということです。
患者や家族には 電話でもアドバイスをするなど、
様々な形で 支援を進めているんです。
オーストラリアでは、
患者の治療費や 医師の育成を 公的な資金でまかなっています。
日本では、 自殺対策は中高年に絞られており、
境界性パーソナリティ障害は 重視されてきませんでした。
また日本では、 心理療法は時間がかかるわりに 診療報酬につながらないため、
積極的に取り組む医療機関が 少ないのが実情です。
林 「境界性パーソナリティ障害の治療は、
世界ではここ数年で 急速に進歩しているんです。
この治療で治るんだということが、 次々と確認されています。
それを日本にも持ってくれば、 何とかなるのではないかと考えます。
日本でも 名だたる精神科医が このテーマに取り組んできて、
成果も上げているんです。
でも 診察室での活動に留まっていて、 家族を取り込んだり、
地域の社会資源と一緒になる 体制になってないんですね。
いわば 点で支えている体制だったんです。
それを 面で支える体制を 作り上げなければいけないですね。
準備はまだまだ不足していて、
私たちこれから 相当に頑張らなければいけない段階にあります。」
〔 NHK 「クローズアップ現代」 より 〕