ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

結局はアメリカ政府の言いなりじゃねーか

2005-09-10 19:43:46 | 時事
 総選挙を明日に控えた今日、『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之(文春新書)を読んでいる。

『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之(文春新書)リンク先はamazon.co.jp

この本を読むと、小泉首相が構造改革と称しているものが、結局はアメリカのシナリオ通りになぞっているだけのものだとわかる。

 この本を読んでわかったのだが、アメリカ政府は在日米国大使館のサイトで日本政府に対する要求を全部日本語で公開している。
日米規制改革および競争政策イニシアティブにもとづく日本国政府への米国政府要望書 2004年10月14日(仮訳)
米国は、小泉総理大臣の思い切った経済改革の課題を強く支持しており、その 課題への取り組みにより促された最近の日本経済成長を歓迎する。また、米国は2004年10月12日に小泉総理大臣が国会における所信表明の中で、「構造改革なくして日本の再生と発展はない」ことを再確認し、日本が意義ある経済改革を達成する努力を継続していることを歓迎する。さらに米国は、広範にわたり規制と構造改革を強く主張してきた規制改革・民間開放推進会議の任務を更新し強化した日本の決定を称賛する。

 ブッシュのポチの頭を「よしよし」と撫でるような前文だ……。

 どれだけ様々な産業分野での市場開放を米国政府が求めているかを見て、圧倒される。そして、小泉内閣と行政府が推進している市場開放や規制緩和が、結局はアメリカの主要産業に後押しされた米国政府がシナリオを書いたものを忠実に実行しているだけに過ぎないことがよくわかる。

 試しに、「郵便金融機関」と「日本郵便公社の民営化」の項を見てみよう。
V. 郵便金融機関

 郵便金融機関(郵便貯金「郵貯」、簡易保険「簡保」)が日本の金融市場の効率的な運営に与える影響について、日本経団連やその他の機関が表明している懸念を米国政府は引き続き共有する。

V-A. 透明性 簡保商品および日本郵政公社による元金無保証型の「郵貯」投資商品の販売または元受けにかかわる法律の改正案の策定につき、米国政府は、日本政府の関係省庁等が、関連分野における民間企業の運営に影響を及ぼしうるあらゆる面について、国民一般 (外国保険会社も含む))への十分な情報提供および意見の収集を行う方策を取ることを求める。それは、保険業界や他の民間利害関係者(国内外の両方)が、以下の事項に関し意見を述べ、また関係する日本政府の職員と意見交換を行なう有意義な機会を提供する事を含む。

V-A-1. 国会提出前の提案プランや法案。

V-A-2. パブリックコメント手続きの最大限の活用と実施を伴う、実施段階前のガイドライン原案や他の規制措置。

V-B. 同一基準および拡大抑制 米国は日本に対し、民営化の章のII.A.1.で挙げている措置に従い、郵便金融機関に民間の競合会社と完全に同一の競争条件を確保するよう求める。さらに、米国は日本に対し、同一の競争条件が確保されるまでは、民間が提供可能ないかなる新規または変更された保険商品の引き受け、或いは新規の元金無保証型の投資商品の元受けを、郵便金融機関が提供する事を禁ずるよう求める。


II. 日本郵政公社の民営化

 日本郵政公社の民営化が日本経済へ最大限の経済的利益をもたらすためには、意欲的にかつ市場原理に基づいて行なわれなければならない。真に市場原理に基づいたアプローチというものは、様々な措置の中でも特に、日本郵政公社に付与されている民間競合社と比べた優遇面の全面的な撤廃を通して日本の保険、銀行、宅配便市場において歪められていない競争を確保することを含まなければならない。これらの優遇面は、米国系企業および日本企業の双方にとって同様に、長年の懸念となっている。経済財政諮問会議は、9月10日に発表した「郵政民営化の基本方針」において、「イコールフッティング」の確立および日本郵政公社と民間企業との間の「競争条件」の均等化の重要性を確認することにより、重要な一歩を踏み出した。経済財政諮問会議の報告書ではさらに、2007年の民営化開始当初から(民間企業と)同様に納税義務およびセーフティネットへの加入義務を負うことや、郵便保険および郵便貯金商品について政府保証を廃止するとの明確な措置を確認した。米国政府は、これらの具体的な提言を歓迎し、それが日本郵政公社の民営化のための法律に反映されるよう求める。

II-A. 郵便保険と郵便貯金 日本郵政公社の民営化が、経済財政諮問会議の求める民間企業との間の「イコールフッティング」を完全に達成し、また日本の保険および銀行分野に公正な競争をもたらすために、米国政府は日本政府に以下の方策を取るよう求める。

II-A-1. 民間企業と完全に同一の競争条件を整備する。それには次のものを含む。

II-A-1-a. 郵便保険と郵便貯金事業に、民間企業と同様の法律、規制、納税条件、責任準備金条件、基準、および規制監督を適用すること。

II-A-1-b. 特に郵便保険と郵便貯金事業の政府保有株式の完全売却が完了するまでの間、新規の郵便保険と郵便貯金商品に暗黙の政府保証があるかのような認識が国民に生じないよう、十分な方策を取る。

II-A-1-c. 新規の郵便保険、郵便貯金および他の関連業務との間の取引がアームスレングスであることを保証するため、完全な会計の透明性を含む適切な措置を実施する。また、日本郵政公社の金融事業と非金融事業の間の相互補助の可能性を排除する。そして

II-A-1-d. 新規の郵便保険と郵便貯金が、その市場支配力を行使して競争を歪曲することが無いよう保証するため、独占禁止法の厳格な施行を含む適切な措置を実施する。

II-A-2. 新しい貸付業務や郵便保険事業による新規または変更された保険商品の導入、または郵便貯金事業における元金無保証型投資商品の元売りを、(上記で提案したとおり)真に同一の競争条件が整備されるまでは一時停止する。また、同一の競争条件の実現後には、このような商品やサービスがバランス良く導入されることを保証する。

II-A-3. 日本政府が、民間で元受けをする元金無保証型投資商品を日本郵政公社で取り扱うことを許可する計画を進めるにあたり、それらの商品の選択が公平で透明性のある形で行われるよう保証する。

II-A-4. 日本郵政公社において販売される民間企業元受けの保険商品の選択が、公平で透明性がある形で行われるよう保証する。

II-A-5. 日本郵政公社の民営化の過程で、郵便保険および郵便貯金事業に新たな優遇が与えられないよう保証する。

II-A-6. 郵便保険と郵便貯金事業の民間企業に対する競争の状況を定期的に調査するための独立した委員会を設置し、民営化の過程において一貫して、同一の競争条件の継続を保証することを目指す。

II-B. 宅配便サービス 日本郵政公社と宅配便業者間の公正な競争を促進するため、米国政府は日本国政府に対して、下記の方策を取ることを要望する。

II-B-1. 独立した規制機関 郵便業務に関する規制当局は日本郵政公社から完全に切り離されかつ独立した機関であることを確実にし、日本郵政公社あるいは公社の管轄下にあるどのような組織であれ、非競争的な方法で事業を展開しないことを確保するための十分な権限を持てるようにする。

II-B-2. 非差別的な処遇 税金や他の料金免除など競争条件を変更するような特別な便益や、物品の運送に関して政府機関による特別な取り扱いや、関税業務にかかるコストの免除などが、政府政策により競争サービスのあるひとつの提供者のみに与えられないことを必要に応じて確実にする。

II-B-3. 相互補助 競争サービス条件下で、全国一律サービスの提供から得られた収益を用い非競争的な相互補助が行われることの防止監督をする。ひとつの監督方法は、日本郵政公社および全ての関連会社の会計が分離、独立でありかつ完全に透明性のあるものとすることであろう。

II-C. 透明性 米国政府は、日本郵政公社の民営化の過程において、下記の方法により、透明性が継続的に確保されるよう求める。

II-C-1. 日本郵政公社民営化の準備期および移行期において、民間の利害関係者(外資系を含む)の要請に基づき、民間企業に影響が及ぶ可能性のある論点について、総務省、郵政民営化準備室、金融庁を含む関係省庁の職員と意見交換をする有意義な機会が提供されるようにする。

II-C-2. 日本政府が開催する委員会やそれら委員会の構成要素の中で、日本郵政公社民営化の準備期および移行期において民間企業に影響が及ぶ可能性のある論点について、民間の利害関係者(外資系を含む)が積極的にその議論に貢献する有意義な機会が提供されるようにする。

II-C-3. 民営化に関する施行規則および省令等の準備も含めて、パブリックコメント手続きが十分に利用され、また最終判断を行なうにあたり、そのコメントが考慮されるようにする。


 ……なるほど、郵便事業もまとめて一括の民営化にこだわったのは、アメリカの宅配便事業に市場参入させる思惑があるからだな。で、去年だったか、アメリカの大手宅配便事業会社UPSがヤマト運輸との提携を解消したことを思い出した。郵政民営化を前提として単独で日本市場に参入するための布石だったのだなとわかる。

 自公が総選挙で勝てば、このアメリカのシナリオ通りにさらに進む。消費者としては市場解放や談合構造が解消されてメリットを受ける分野もあるだろうが、アメリカ政府の言いなりに政策を強行する小泉首相が改革者を称して都合の悪いことを隠していることも、マスコミが小泉首相のパフォーマンスだけを強調して「改革」の内実について論じないことも、気に入らないし、薄ら寒さを覚える。大政翼賛会時代の日本を思い起こす。

 とりあえず、自公が勝ったら、預けている郵便貯金は上限500万円を超える分を引き出して、別のところに預けることにしようと決めている。

「JANJAN」のコラムから

2005-09-09 13:02:29 | 時事
 市民記者によるインターネット新聞「JANJAN」の、あるコラムをご紹介。

 「JANJAN」は良くも悪くも様々な意見の記者が様々なテーマで寄稿するため全ては読んでいないが、時々面白いものがある。

純一郎、郵政はちいーと細いぞ

 小泉首相の祖父「入れ墨の又さん」こと小泉又次郎の一代記はなかなか面白かった。軍人に憧れたが長男であるために父から家業の土木業を継ぐようにプレッシャーをかけられ、家業を継ぐ決意として全身に入れ墨を彫ったこと。政治に目覚めて記者から政界に入ったが一貫して反主流派の党人政治家であったこと。普通選挙運動に政治生命を賭けたこと。

女性参政権は見送られた(実現は戦後)が、納税条件が撤廃され、25歳以上の男子に一律選挙権が与えられた。又次郎氏がどんな気持ちで普選運動に取り組んだのかは著書『普選運動秘史』(1928年、平野書房)に詳しい。もう1つ、普通選挙法と同時に、言論・思想の自由を奪った治安維持法が制定されたことも付け加えて置きたい。


普通選挙と治安維持法がセットだったという指摘が、ぴりっと利いている。

小泉純一郎首相は初当選(1972年)のころから「郵政民営化」にこだわってきた。父、純也氏の急死で留学先のロンドンから戻り、初出馬した69年の総選挙で、地域の特定郵便局がそろって同じ選挙区の他の自民党候補を推したため(当時は中選挙区制。定数5の神奈川2区)、落選の憂き目を見たことが原点といわれる。それから一貫して郵政批判を続けてきた。

 小泉純一郎氏が郵政民営化を「改革の本丸」と位置付けることは、個人の気持ちとしてはわからないではない。しかし、一国の責任者たる首相としては、いかがなものか。政治はあくまでも公憤が基でなければならない。どうみても郵政民営化が、いま日本の政治が取り組むべき「改革の本丸」とは思えない。私憤、私怨の類は、政治にはいただけない。


 管理人の9月7日記事「どこが小さな政府じゃ」とほぼ同じだ……(苦笑)。

 コラムの構成としては、中段に筆者が重要と思っている地方分権の話題が、前段の又次郎の一代記と後段の小泉批判に挟まっていて、全体のロジックがつながっていないと思う。でも、なかなか面白かった。

「少なくとも悪くはなっていない」

2005-09-08 17:25:47 | 時事
欧州諸国は相変わらずブッシュ不信
調査は米国のジャーマン・マーシャル・ファンド、イタリアのコンパニア・ディ・サンパオロの両調査機関が合同で実施した。これによると、ブッシュ大統領の外交政策に反対する欧州人は約72%で、昨年の75%から少し減っただけ。


この結果に対する国務省当局者のコメントに笑ってしまった。

「昨年と比べれば、少なくとも悪くはなっていない」


 そりゃそうだ、最悪、これ以上悪くなりようがないってことだから(爆)。

どこが小さな政府じゃ

2005-09-07 13:13:16 | 時事
クリッピング代わりに貼っておく。

なぜ郵政民営化か

1.アメリカの対日要求
ブログ「このままでいいの?ニッポン」
国民を騙すような候補者・政党は支持できない

 今ちょうど、アメリカの対日政策の象徴である「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」について書かれた解説本を読んでいるところ。アメリカ政府は、ずっと前から日本の郵貯簡保の資金運用をさせろと迫っていることがわかります。

 kenkun63さんの「小さな政府」の嘘について付け加えると、イラク派兵を続け、特殊法人改革は進めず、整備新幹線はつくり続ける小泉内閣の構想のどこが「小さな政府」なのか、私は訊きたい。


2.小泉首相による経世会つぶしの一環
はてなダイアリー「木走日記」
旧経世会の落日に一つの時代の終焉を見る~積年の闘争に勝利した小泉

 自民党の歴史の解説書をちょっと読んでいたら、祖父が逓信大臣だった小泉さんが初めて衆議院選挙に出馬した時に、経世会系でしかも特定郵便局長の支持を受けた自民党候補者によって落選したのが国政デビューだったと出ていた。

 庶民としては、土木族も厚生族も同じように自民党と省庁から一掃していただきたいのはヤマヤマ。

 しかし、なぜ郵政改革かを語れないのは、論理破綻しているからというより、私怨から発している情念ゆえではないかと思えてしまう今日この頃である。

☆★☆★

9月10日追記。小泉政権下で、国と地方の長期債務残高が774兆円となった。新規国際発行額を30兆円にするという公約は破りまくって、後世の日本国民から莫大な借金をしている。その、どこが、小さな政府といえるのか。

台風シフト

2005-09-06 21:28:18 | しごと
 時速20~35キロと移動の遅い台風14号、関西には今のところ雨や風の気配はない。

 だが、全国から参加者が集まっている研修の最終日ともなると、帰宅の足まで心配しなければならない。

 九州と広島から来ている参加者のために、交通機関が止まった場合にと今晩のホテルを昨日用意した。が、交通機関が動いているうちに帰りたいという広島の参加者、今晩大阪に泊まると明日の夜まで動けなくなるから今晩は広島に泊まって明日朝に九州に移動したいという九州の参加者の希望を聞いて、ホテルはキャンセル。ふたりには、広島まで新幹線が動いているうちにと昼過ぎに早めの離脱を許可した。

 一方、札幌から参加している参加者は、いつもなら最終便に間に合わないかも知れないので一泊して翌朝帰るのだが、明日は飛行機が飛ばなくなるかも知れないと、今晩のホテルをキャンセルし、今晩の関空発最終便を確保。研修終了後に関空に向かってもらった。

 東海・関東方面からの参加者は、比較的に影響が少ないと判断して、5時に研修終了して帰宅開始。テレビでは8時過ぎに、新幹線は岐阜羽島~米原間で徐行運転になったと報じられたが、道草をしていなければ無事に通り抜けただろう。

 昨日の夕方時点では昼過ぎに研修を切り上げて全員を帰す必要があるかも知れないと思ったが、それほどの事態にはならなくてよかった。しかし、安全第一で帰宅の足を確保するに当たって、個々人の事情に気を遣う。

☆★☆★

時により 過ぐれば民の 嘆きなり 八大竜王 雨やめたまへ(源実朝)

台風に振り回されるシーズン

2005-09-05 17:23:31 | しごと
 今日・明日に予定している2日間の研修は、明日朝の台風14号の様子を見て、切り上げ終了の予定。

 明後日から2日半で予定している研修は、7日終日にわたって西日本が台風の影響下にあることと、内容の都合上時間短縮は不可能であるため、今日夕方に延期を決定。

 今年もまた、台風に泣かされる研修シーズン。研修シーズンが7月~10月なので、あり得ることなのだが、実によく当たる。

☆★☆★

 たとえば去年。月に一度、2泊3日の研修は2回も台風通過で交通機関が途絶し、参加者の一部が前日に会場入りできなくなった。うちひとりは、鈍行電車に閉じ込められたまま一晩を過ごす結果となり、体調を崩して参加できなくなった(汗)。

 今年については、先月の2日間の研修で、やはり台風のために2時間繰り上げて終了した。

 今回もそうだが、全国から参加者が来る研修の場合は、移動の安全も考えていかなければならない。

 中止に伴うホテルや会場のキャンセル、講師のキャンセルも経済的被害が最小になるように交渉が発生する。スタッフが対応してくれているが、代替日程を年内に組まないと費用実績に影響するんだよな……(汗)。

ネット世論調査、結果は全国紙の結果とちょい違う

2005-09-05 12:18:40 | 時事
 一見して、全国紙の世論調査と傾向が違うところが目に付いた。

総選挙へ際だつ関心の高さ 争点は年金・行財政改革 (インフォシーク)

 詳報はこちら。
楽天リサーチ 「第44回衆院総選挙」に関する自主調査結果を発表 ~浮動票層、投票のポイントは「景気対策」と「少子化対策」~

 全国紙の世論調査は既に自民・公明が過半数を制すると見ているようだが、今回は支持政党なしの浮動票が鍵になると思う。しかも、投票率は過去の傾向に反してぐんと上がる傾向がある。

 全国紙の世論調査による事前予想と実際の投票行動に乖離があるのは、前回の衆議院選挙で証明済み。

 この楽天の調査では、回答者が「郵政民営化是か非か」に引っ張られていないところに注目。全国紙の世論調査で結果が違うのは、ネットユーザー中心という回答者の層の特性かも知れない。支持政党なしの浮動票の比率は、全国紙の世論調査よりも高いのではないかと推測。その意味で面白い。

 ……そして、支持政党なしだけど反小泉の管理人としては、この結果を見て、日曜日の選挙結果に少し希望をつなぎたい。「小泉ショー」に踊らされていない支持政党なし層こそ、投票所に行って欲しい。そして、自分の投票行動が結果にどう反映されるかを見て欲しい。

4度目のチームビルディングセッション

2005-09-03 22:51:55 | しごと
 今年に入って4度目のチームビルディングセッションを1泊2日で終了。計算していた以上にいいセッションになった。私の貢献というよりも、参加者が自発的に気づいてくれて、互いの協力を強化しなければいけないという気持ちになってくれたことがセッションの成功を決めたと思う。

 今回は工場の全マネジャーたちが対象で、18人が参加。工場長の依頼で企画運営したのだが、3年前のリストラクチャリングで、希望退職を募ってベテランのマネジャーがごっそり抜けて後を継いだ若いマネジャーが右往左往していたり、正社員のかなりな割合をパート契約にして(無論、それなりの経済補償はしたが)契約社員を入れたために処遇やスキル継承の点でいろいろな問題があったり、何よりも賃金カット10パーセントを呑んだ参加者自身の一部が「会社は自分たちを守ってくれない」という被害者意識で後ろ向きだったり、いろいろ問題があった。

 もともと口が重い工場のマネジャーたちが相手で、どう意見を引き出すか、率直に話してもらうか、事前には頭を悩ませた。しかし、蓋を開けてみたら、最初の日の午前中は後ろ向きの意見もあったものの(それも、吐き出してもらうことがチームビルディングセッションでは重要だ)、現状をポジティブに捉える発言が出てきて、午後からは一気に明るいセッションになった。それが、ひとつのブレークスルーになった。

 そしてもうひとつの鍵は、あるリーダーシップ研修を見学してヒントをもらった「車座」セッション。最初はテーブルを組んで小グループでディスカッションしてもらったのだが、一日目の午後後半にテーブルを取っ払い、椅子だけで全員が身を寄せ合って円になり、彼らが一番重要だと考える課題について話してもらった。テーブルなど遮るものがなく、身を寄せ合うことで一体感が生まれ、共通の課題に向かってもっと先に進もう、場当たりでなく建設的な解決の方向を探ろう、というモメンタムが生まれた。

 また、このセッションを依頼した工場長の全面的なバックアップも成功の鍵のひとつ。重要課題のディスカッションは解決に至らなかったものの、プロジェクトとして引き取ると約束してくれた。また、工場長が狙っていた、上からのビジョン・戦略待ちという姿勢を能動的・自発的・自律的に変えるという目的に対してうまく作用したセッションの成功を大いに評価してくれた。

 最後の半日に参加した社長も、このセッションについてはぜひ社内のイントラネットの広報ニュースで広めて欲しいと言ってくれた。

 チームビルディングセッションは、どんなに緻密にアジェンダと時間割を計画しても、蓋を開けてみないとわからない。しかし、夜の飲み会も含めて1泊2日を通じて参加者の顔の輝きが違ってくるのを目の当たりにすると、やりがいというか喜びを感じる。

 私は、自分の仕事をディレクターまたはプロデューサーだと思っている。研修やチームビルディングセッションという「場」をプロデュースすることによって、参加者が日常の仕事の中で感じているモヤモヤ感や悩みや問題を整理し、気づき、あるいは今まで身に付いていなかった知識やスキルを得て、元気に仕事の場に戻る「場」をどうつくるか、日常の仕事の場に彼らが戻るときにセッションを通じて得たものを活かせるような上司の支援に繋いでいくことで、参加者も変わり、上司も変わっていく。製品のように目に見えるものではないが、非日常の「場」で得たものがひとりひとりの財産になるようなサービスをどうデザインして提供していくか、やりがいのある仕事だと思っている。