昨日9日、中部電力は浜岡原発の全面停止を求めた菅首相の要請を受け入れると発表しました。
中部電力は節電を呼びかける考えで、明るい名古屋の夜景も、首都圏のように暗くなることでしょう。
中部電力が原発をすべて火力に切り替えた場合、年間2500億円相当のコスト増になり、12年3月期の営業赤字転落は確実で、昨日、中部電株が急落。終値10%安という11年ぶりの安値となり、トヨタなど管内の製造業の株も売られ、自動車株は全面安に陥りました。
中部電力は合わせて東電への電力融通の取りやめを発表しました。現在、東電に少なくとも27万kWの電力を供給しており、夏場には最大100万kWを融通する予定でした。これにより、首都圏の電力供給は一気に暗雲がたれこめました。
自動車メーカーや、24時間電気を使う半導体メーカーなどは、東電管内の工場を中部以西にシフトして乗り切ろうとしていましたが、そうした計画も見直しを迫られ、中部圏の工場も西日本へのシフトが必要になりました。
中部圏は震災も起きていないのに、菅首相の暴走によって、唐突に「電力危機」に見舞われました。また、全国で停止中の原発の再稼働も停滞が予想され、全国的な「電力危機」をもたらすでしょう。
今回の菅首相の判断は、日本全体の経済や国民生活に甚大な打撃を与えます。これはまさしく「人災」であり、「日本から原発の灯を消したい」「日本経済を縮小させたい」という菅氏の本心が露呈したものであります。
「政治主導」と言えば聞こえは良いですが、地元自治体への説明、代替エネルギー確保計画も無い中での停止要請は「政治の暴走」であり、菅首相の手法は「独裁制」だと批判されて当然です。
反原発論者には歓喜を持って受け入れられている原発停止要請ですが、マスコミは菅首相の判断を「英断」と報じるなど、冷静な議論はいまだに聞こえず、メディアでは産経新聞くらいしか批判をしていません。
国民は正しい情報を与えられず、今回の首相の決定を「英断」と誤解しているのが残念でなりません。
私は、中部電力が「停止要請」を受け入れた背景にはリスクヘッジが含まれていると判断します。
福島第一原発の事故では、政府は東電に全面的に責任をなすりつけました。
原子力損害賠償法第3条但書により「異常に巨大な天災地変」の場合、原子力事業者は損害賠償が免責されます。しかし、「千年に一度の天災」であっても、政府は東電は免責に値しないと判断し、責任を押し付けています。
これらを勘案すると、中部電力が今回の菅首相の停止要請を拒否し、震災被害が出た場合には、中部電が全責任を負わされることは必至と判断したものと思われます。
私は、中部電力側が「(停止要請を)受け入れても拒否してもマイナス」と言及しているのは、免責まで含めた駆け引きが下敷きになっているものと思います。
逆に言えば、政府は「国策民営」で進めている原発の責任を、すべて電力会社に押し付けているのです。
今回の首相の停止要請によって、中部電力や御前崎市は大変な混乱に陥り、今後、混乱は中部圏、全国へと広がっていくでしょう。
よって、私は、菅首相の判断は完全な誤りであり、決して英雄視すべきでないと考えます。
中野 雄太
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