国の借金1000兆円超えで「返済できなくなる」は本当?
http://the-liberty.com/article.php?pageId=2&item_id=6032&
2013年度の国家予算が15日に成立しました。一般会計92.6兆円という過去最大規模の予算です。その一方、昨年度末の国の借金は991兆円となり、今年度末には1107兆円にもなるということです。国の借金が増え続けると、この先、どうなるのでしょうか。
15日付朝日新聞を見ると、「増す借金、支える日銀」と、日銀の大規模な金融緩和によって、政府が借金のために発行する長期国債の7割を日銀が買い取ることで、「政府も安心して借金を重ねられる」としつつ、「だが、借金がふくらめば、政府は将来、返済のために増税しなければならない。本当に返済できるのかという不安が高まれば国債が売られて価格が下がり、……景気に冷や水を浴びせる」など、将来的にマイナスとなるシナリオを強調しています。
マスコミはこのような予測を以前からしていますが、これは本当でしょうか? 順を追って考えてみましょう。
まず、「国の借金」とは国債のことを指しています。国債は政府が発行し、それを金融機関などが購入します。国債には利子が付きます。この利子は基本的に預貯金の利子より高いため、金融機関は顧客の預貯金を原資にして、国債を買い、利子の差額分だけ利益を得ることができます。
さて、財務省が5月10日に、昨年度末の国の借金が991兆円と発表しました。NHKなどマスコミは毎回のように、「国民1人当たり約778万円の借金を抱えている計算になる」と報道していますが、これは明らかな「誤り」です。
なぜなら、国債を買っているのは金融機関であり、その原資は国民の預貯金なので、政府の借金である国債を、間接的に国民が買っているわけです。ですから、「国の借金」の貸し手は国民であり、正確には「国民1人当たり約778万円の資産」と言うべきです。
日本の場合、国債の95%は日本国内で売買されています。大半を外国が買っているなら、外国人が売り浴びせたら破綻する可能性はありますが、日本の場合はその心配はありません。
では、日銀が国債を買い取ると、どうなるのでしょうか。
日銀は日銀券、つまり1万円札などの紙幣を発行するのが一番の仕事です。日銀が金融機関から国債を買い取ると、その分のお金を刷って、金融機関に渡します。金融機関がそのお金を企業に融資することで、民間にお金が出回っていきます。この循環が大きくなると、景気が良くなっていきます。
つまり、「国の借金」である国債が、回り回って民間にお金として流れていくと、「国の資産」もまた増えていくのです。国の資産とは、たとえば道路や橋、公共の建物などです。財務省もマスコミも、いつも「国の借金」だけが増えていることを騒ぎ立てますが、一方で「国の資産」もたくさんあるのです。これが600兆円分くらいあります。
それに、国民の金融資産は1500兆円もあり、景気が上向いて株価が上がり、預金金利も上がれば、こちらも増えていきます。
結局、国債を日銀が一定の枠内で買い取り、そのお金を市中に流すことで、国の資産が増え、国民の資産も増えていきます。ですから、「借金」だけを騒ぎ立てるのは無意味ということです。
したがって、「本当に政府が借金返済ができるのかという不安が高まると、国債が売られて、大変なことになる」という報道も、今の日本では、ほとんど可能性のない予測と言えるでしょう。(仁)
【関連記事】
2013年4月6日付本欄 【そもそも解説】「金融緩和」って何?
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5851
2013年5月8日付本欄 東証株価1万4千円台を回復さらなる成長のためには増税をやめるべき