行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

コックさんからレストランの社長へ(シリーズ第18回)

2009-01-23 01:04:38 | 行政書士のお仕事

 5年程前、初期の頃からのクライアントで、永住に至るまでの在留資格をお世話させて頂いた某南アジアの方が経営するインド料理レストランから、あるコックさんの更新手続きを依頼されました。そのコックさん△△君のお話です。

 この△△君、不運な青年で、招聘されたレントランが数ヶ月で潰れてしまい、別なインドレストランに拾われたものの、給料は安くこき使われ、源泉徴収票さえも貰えず、著しく悪い待遇だったのでした。そこで、この方が見かねて、ご自分のレンストランのセカンドシェフとして採用したのでした。

 ところが、その長年のクライアントさん、今度はご自分の家庭でギクシャクし始めて、肝心のレンストラン経営でも色々とトラブルが出て来たのでした。そして、結局はこのレストランを転売したのでした。そこで、お知り合いの、やはり別なインド料理レストランの経営者に、この△△君を引き取って貰ったのでした。

 この別な経営者のXXさんという方で、日本語の発音が抜群に上手く、一瞬日本人かと思わせるような発音で話される方でした。そして、それからというもの、その方の会社手続、永住許可、別なコックさんの招聘など色々な面で順調にお手伝いさせて頂いてたのでしたが・・・。

 ところが、好事魔多しとでも言うのでしょうか、誠に残念な事に、このXXさん、つい最近、突然体調を崩されて、事実上レストランを廃業せざるを得なくなってしまったのでした。

 更に悪いことに、△△君も持病の椎間板ヘルニアが悪化して手術を余儀なくされたのでした。しかし、幸い手術が成功したのでしたが、結果として失業してしまったので、一時帰国したのでしたが・・・。

 ところが、これが逆にこの不運だった△△君の分水嶺となる?のでしょうか、ご自分でお店を持つためにこつこつ貯めた資金に加えて、親御さんから独立開業資金援助をして貰ったようで、前雇用主でオーナーのXXさんと共に事務所にお見えになりました。

 「お二人ともお久しぶりですね!XXさんは体調は如何ですか?△△さんの腰の具合はどうですか?」なとど一通りの挨拶を済ませて、「ところで、今日はどのような御用向きですか?」

 「先生、△△が今度独立してレストランをするので、色々と助けてやって貰いたいんです。それに、数ヶ月後にはビザの更新もありますし・・・」とXXさん。

 「今度は、△△さんが経営者になるのですか?日本語は大丈夫ですか?」

 「はい、センセ、だいぶニホン語、話せるようにナリマシタ。」

 「ああ、だいぶ日本語を覚えましたね!でも、XXさんは日本語は達者で、日本の商習慣を良くご存じでしたから大丈夫でしたが・・・。△△さん、大丈夫ですか?日本は良い人も居ますが、残念ながら悪~い人も多いんですよ。XXさんに最初は手伝って貰ったら如何ですか?」

 「私もそれが心配でして、それにビザの事もあるので、昨年休眠した私の会社を譲ろうかと思って・・・」と、前オーナーのXXさん。

 「△△さん。XXさんに、数年は手伝って貰ったらどうでしょうか?XXさんは、誠実で信頼の置ける方だと私は思うのですが・・・。」

 「はい、センセ。XXさんは、私のお兄さんみたいな人でシンライしています。」

 「そうですか!それは良かった。それでは、XXさんの会社に、△△さんは500万円以上の増資、つまり会社に500万円以上を出資して、△△さんが社長になったら如何ですか?」と、私。

 それから、数週間後の一昨日、取得したばかりの登記簿謄本には、資本金が604万と増額され、代表取締役に△△君の名前が新たに記載されたのでした。

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 「この、印鑑は実印と言って、あなたのサインと同じですから、大切に保管して下さい。通常は、この角印という判を使って下さい。どうしても、会社の実印でないと駄目と言われたら、必ずXXさんに相談して下さい。とにかく、実印は簡単に押しては駄目ですよ!押す前に、必ずXXさんか、私に相談して下さいね!」

 「△△さん、あなたはもうこの会社の社長なんですよ!ですから、とても責任が重くなりますので、くれぐれも注意して下さいね!料理を作るだけではないんですよ。お客様へのサービスとか、材料の購入とか、お金の管理もしっかりやって下さいね!」

 「ハイ、わかりました。ガンバリマス!」

 という訳で、この△△君、雇われのコックさんの身から、とうとう社長になってしまいました!

 ”どちらかと言うと今まで不運続きだった△△君、この新しいカレーレストランで一発逆転成功させてあげたいなあ。人生そう悪い事ばかり続く事もないだろうし。カレーレストランは、日銭が稼げる商売だし。カレーの味は確かに美味しく太鼓判を押せるし、何よりもXXさんがやっていたカレーレストランは、結構流行っていたからなあ。兎に角、何とか軌道に乗せてあげたいものだ。そして、新たなクライアント企業にもなるしなあ・・・。”なとど思いつつ、彼の嬉しそうに帰って行く姿を見送ったのでした。

 それにしても、日本には悪い奴も多いからなぁ・・・、知人の税理士さん、前オーナーのXXさんなどと連携して、この△△君を皆で育てていかなくては!と思った、外国人企業家誕生の一幕でした。

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