行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

会社の中枢機能を人件費の安い国に移して成功した例が今まである?

2011-09-09 08:46:28 | インポート

 歴史的に見て、産業革命発祥の地イギリスの時代から、生産現場は人件費の安い国にその製造場所を移転させることが行われ続けている。

 そして今まさに、日本のメーカーは円高に苦しんでおり、海外生産によるコスト削減によって活路を見いだそうとしている。

 これを悪いこととは言わないが、本社機能、或いは、会社の中枢機能まで海外に移転させて成功した事例は、今まで聞いたことがないのである!

 法人税、所得税、付加価値税(消費税)、社会保障費が寧ろ高率な欧米の企業が、人件費の安い国に会社の中枢機能までを移して成功したり、或いは、成功しているという話は、今の今まで一度たりとも聞いたことが無いのである!

 それは、どうしてであろうか。

 それは、その国の政権、政情、経済の安定性、通貨信用力、安全保障面での安定性などで、不安定要素が著しくなれば、その企業の資産が一夜にして無になってしまうからである。

 だから、安全、安心を買う意味で、企業の中枢部門は必ず欧米諸国や日本などの本国から逃げ出さないのである。

 昨今、経団連の呆け老人達が、法人税・所得税を下げろ!、原発を続けろ!、消費税を上げるな!、そうでもしないと企業は皆海外へ脱出する!、などとホザいているが、実際移転しているのは、人件費比率が高い部門だけであり、その部門へ納品している中小の下請け企業ばかりなのである。

 こういった中小零細の下請企業は、中枢機能だけを日本に残して移転し、機能を二箇所に分散させる余裕もない事から、決死の覚悟で全社を挙げて移転しようとしているのである。

 ところが、おそらく一定の期間が過ぎて、ひとたびその国の人件費が高騰するなり、或いは、政情不安が起きたならば、大企業は彼等との取引を、あっという間に取りやめて、即座に切り捨てられる運命にあるのだ。

 そうなれば、その優秀だった中小零細企業達の技術が支えていた開発力や品質維持力は即座に消え失って行くことであろう。

 結果として、多くの優秀な中小の製造業が消えて去って行った英国や米国と同じ道を辿ることになる事は間違いないようだ。但し、英米は、金融投資などを通じて強大な国際資本を蓄え、途上諸国の経済を実質的に支配しているのである。

 では、我が日本はどうであろうか? 確かに、商社やソニーを初めとする大手や中堅企業に至るまで、資本の分散化や多角化は相当に進んでいる。しかし、これら企業の中枢部門や開発部門は、日本か欧米にしか置いていないのである。

 一方で、多くの下請け企業である中小零細企業の海外転出に活路を求めるしか選択肢が無いような風潮が蔓延している昨今、いずれは切り捨てられる運命にある中小零細の製造メーカー達の姿が、何かとても哀れに見えてくるのである。

 この昨今の日本の中小零細企業達の姿が、太平洋戦争で南方に送られて、玉砕という美名の下に消え去っていった兵士達の姿とダブって見えるのは私だけであろうか。

 昨今、日本に進出しようとしている中国系、台湾系企業の数が密かに増えており、また税金や社会保障費の高額な欧米諸国へも彼等がリスク分散の為に資本の分散している事実も、中小零細企業の方々はおそらくご存じあるまい。

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