地中海料理店カルタゴに行って以来塩野七生『ローマ人の物語』の「ハンニバル戦記」の巻を枕元において寝る前にちょっとずつ読んでたのですが、やっと読了。
終盤、カルタゴがローマに攻め入られ、最後の決戦となる「ザマの会戦」の直前にハンニバルがローマ軍を率いるスピキオ(・アフリカヌス)が会見したときのハンニバルの言葉が印象的でした。
ローマを席巻したハンニバルも、イタリア半島で孤軍奮闘していたものの、ローマ軍にカルタゴ領だったスペインを制圧され、地中海の制海権を握られ本国に攻め入られるなかで呼び戻され、劣勢の中での最後の会戦を前に、講和を申し出る(既にローマ側からは一度提示されているのをカルタゴが蹴った後なのですが)ところです。
現在からは予測できない未来があるということであり、良きことはより大きいほうを選択し、悪しきことはより小さいほうを選ぶやり方でしか、それへの対策はないと言いたいのだ。
しかしスピキオは講和の誘いに乗らず、最後の決戦でハンニバルは敗れてしまいます。
行動経済学では、人間は損失の傷みを過大評価しがちで、リスクに必要以上に備える反面大儲けのチャンスを逃してしまうといわれていますが、ハンニバルは勢いに乗っているスピキオに対し、損失の最小化=ミニマックス原理をとれとうながしたのですが、スピキオはここが勝負所と心得、利得の最大化=一気にカルタゴを破ることに成功したわけです。
戦争だけでなくビジネスの契約交渉でも、上手くいかなかったときの契約解除とか違約金の話はけっこうするのですが、予想以上にうまくいったときのことを想定していなくて、儲かったはずなのに不満がたまるということがあります。
さて、今回の総選挙で優勢が伝えられている民主党も「予想以上の大勝」への心構えと備えは十分でしょうか?
比例区の名簿下位の候補者に一定のレベルの人を集められずにさくらパパみたいなのをもう一度出すと見識を問われます。
政権を取ったときの閣僚・副大臣などの人事についても論功行賞でなく、きちんと能力のある人を配置しないといけません。
単独政権が実現したとした場合に、今まで野党勢力として時には共闘していた各党との関係をどうするかも問題です。
それに、肝心の経済対策と財政問題もあります。
国民は「せっかく勝たせたんだから世の中良くなるはずだ」と思っているでしょうし、マスコミは「自民党は問題だが野党は批判能力はあるものの政権担当能力はない」というずっとやってきたトーンを変える必要があるのか、このまま楽ができるのかを見計らっているでしょう。
民主党、今回は本気で政権を取るつもりのようなので、その辺の準備もきちんとしておいてもらいたいものです。