一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『評伝 若泉敬』

2011-09-09 | 乱読日記

これは「沖縄の本」というより沖縄関連本です。

佐藤栄作首相の密使として沖縄返還交渉に関わり、晩年『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』を著し、沖縄返還交渉における核密約の存在を明らかにした若泉敬の生い立ちから晩年に至るまでの詳細な伝記です。

沖縄の核密約だけでなく、国際政治をめぐる議論がどう変質して行ったかについても詳しく触れています。


若泉は1930年生まれ。少年期に戦争・敗戦を迎え、戦後日本のかたちが作られるその時期に大学生から国際政治の研究者の道に進んでいますが、この世代の人々の話を読んだりきいたりすると、腹が据わっていること、そして当時の大学生は人数も少なくかつ入試競争も激しいなかで、いい意味でのエリート意識と責任感を持っていたように感じます。

日本の外交政策をめぐる議論も、内容以上にそれを議論する当事者の迫力が今と違うことを痛感します。

現在の政治状況がそうなってしまっているのは、もういいオッサンになった私たちの責任でもあるのですが。


1960年代に若泉が吉田茂と対談したときのこのくだりは耳に痛いです。

「・・・この頃の吉田は、かつて日清・日露戦後の日本人が「いわゆる小成に安んじて遠大の志望を欠」き、かえって傍若無人となって国を誤ったという歴史の教訓を念頭に、高度経済成長後の若い世代に夢を持たせられなければ将来は危ういと考えていたのである」


バブルの傍若無人どころか「小成」すらも危ういと自信をなくす一方にみえる今の日本で、若い世代に夢を持たせられるために何が出来るかが高度成長期に育ったオッサン世代の責任ですな。

がんばらねば。

 

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