一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル 』

2012-01-19 | 乱読日記

現代の若者が直面している人間関係、コミュニケーションの問題を分析した本。僕のようなオジサン世代にとっては、具体例も交え非常にわかりやすい分析になっています。

また、amazonでの高校生のレビュー(参照)でも、適確な分析だと評価されているので、現実(の少なくとも一定の部分)を的確に切り取っているのだと思います。


著者は現代の若者たちが対立の回避を最優先し、注意深く気を遣いながら、なるべく衝突を避けようと慎重に人間関係を営んでいることを「優しい関係」と特徴づけ、それによってもたらされる若者たちの息苦しさや現代の人間関係の困難さを分析しています。  

・・・彼らの「優しい関係」は、その外部へ一時的に避難することも、その内部で孤高にふるまうことも、どちらも認めない強い圧力をもっている。だから、他の人間関係へ乗り換えることも難しいし、ひとりで生活していくことも難しい。そのため、現在の人間関係における躓きは、そのまま社会生活の難しさを意味しがちである。  

・・・社会生活からひきこもり状態に移行するときの敷居の低さは、ひきこもり状態から社会生活に復帰するときの敷居の高さと、じつは表裏一体の関係にある。そのどちらも、円滑で過剰なコミュニケーションへの没入を共用する「優しい関係」のキツさを背負っているからである。

一方で、最近のビジネスにおいては自分や相手の感情を場面に合わせて適切に処理し対人関係をスムーズに築く能力が「コミュニケーション能力」「人間力」として重視される「人間像の矮小化」「コミュニケーション能力の市場化」が起こっていると指摘します。  

いわば孤島化した人間関係を生きる若者たちは、人間関係の多元化にともなう価値の相対化とその魅力の低下に対処するために、また、昨今の新自由主義的な経済活動に適合したコミュニケーションへの社会的圧力に抵抗するために、・・・それでもなお生のリアリティをなんとか保ちつづけるために、社会へとつながる回路をあえて積極的に遮断しようとしているのである。  

新書版ということもあり、具体例からテンポ良くと論旨を進めていく書きぶりは気持ちよくもあり、また「そこまで行ってしまっているのか」と怖くなりもします。  


若者世代を理解する一助になるだけでなく、実は我々大人の世界も「空気を読む」コミュニケーションに毒されつつあるのではないかと反省するきっかけにもなります。

「外部へ一時的に避難することも、その内部で孤高にふるまうことも、どちらも認めない強い圧力をもっている」って、こういう組織ってありますよね。
オリンパスや大王製紙の取締役会もそういう雰囲気になってしまっていたのかもしれません。


お後がよろしいようで。


 

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