積読していた2009年発行の本でしたが興味深く読めました。
アフリカといえば、BOP (Base Of the Pyramid)ビジネスが話題になっていますが、本書(著者はインド商科大学院の学部長を経てテキサス大学の経営大学院の教授をしているインド人)は、現地での詳細なリサーチをもとにアフリカの市場としての可能性をより多面的に語っています。
そこには、貧困・汚職・貧弱な指導層ばかりをとりあげる「CNN版アフリカ」にはない、活力あふれるアフリカの姿があります。
アフリカには表題の9億人の人口だけでなく、ピラミッド型の年齢構成、統計に表れない非公式経済の規模(逆に言えば統計の捕捉率が低いために実態よりも低く評価されている)、外国への出稼ぎ者・移住者からの送金(2005年の在外ガーナ人の仕送りは国の輸出金額より多かった)など、一般に思われている以上に豊かで潜在力があると指摘します。
そして、権力こそまだ握っているものの過去にとらわれている「カバ世代」から携帯電話の普及でスピードとネットワークを駆使する企業家精神あふれる「チーター世代」が市場を切り開いている様子が描かれます。
起業家精神は、アフリカで健在なのだ。起業家は問題を解決する。電力がなくなれば、発電機やインバーターを売る。金融システムが不安定になれば、外国為替投資で稼ぐ、雇用がなくなれば道端で雑貨屋を開く。起業家精神と消費市場の発展は、政治改革よりもずっと明朗で、安定した、強力な長期的進展の駆動力なのかもしれない。
そしてアフリカの抱える問題は、ビジネスチャンスをも生み出せる。アフリカ各地における安定的な電力供給の欠如から、発電機や太陽電池の市場が生まれた。不安定な金融システムは、携帯電話の通話時間を交換するシステムやマイクロファイナンス、携帯電話による銀行システムなどを生み出した。エイズからマラリアまでさまざまな健康問題により、新たな治療法やジェネリック医薬品、検査器具、保険に対する需要が生まれた。
本書で取り上げられている起業家の話は、わくわくさせられるものばかりです。
想像ですが、終戦直後の日本もこんな感じだったのではないでしょうか。
(松下幸之助の二股ソケットなんか「足りないところを補う」典型的ですよね。)
今の日本に必要なのは、「出来上がった」先進工業国としてBOP市場の攻略を考えるだけではなく、この人のようにアフリカの若い起業家精神を自らにも取り込むことなんじゃないかと思いました。
本書の末文です。
アフリカの市場は発展を続けている。今からでもアフリカの成長に携わることはできる。古いアフリカのことわざにこのようなものがある。
「木を植えるのに一番いい時期は、20年前だ。二番目にいい時期は、今だ」