一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『中国停滞の核心』

2014-08-20 | 乱読日記

『中国台頭の終焉』の著者の続編。

前著の指摘通り、中国経済は減速しつつあるが、その中で中国がどういう方向を目指そうとしているかを分析している。

 「経済成長」は問題だらけだった中共統治の唯一の取り柄だった。それが行き詰ってしまったことは、中国政治の方向を大きく変えつつある。2013年11月に開催された三中全会が改革派の主張を数多く取り入れた「全方位」の改革になったことも、体制内の危機感の強さから説明できると思うが、決まった改革がどういう内容のものか、実行の難しさは那辺にあるのかを・・・本書では丁寧な解説を心掛けた。  

私は「経済屋」で政治は専門外であるが、今回は政治や外交についても、あえて「領空侵犯」を試みた。・・・習近平主席が短期間に権力基盤を強化したことも、習主席に毛沢東ばりのカリスマがあるからではなく、体制内に広がる危機感が習主席を押し上げたからだと考えている。

興味深かったのは、中国には「単一王朝」という「経路依存性」があるという指摘。
もともと中国は広大な国土であるため、歴代王朝は「県」単位の街にしか政府機能を置かず「市・鎮・村落」には関心がなかった。また人についても四書五経に通じた知的エリート層の「士」ろ圧倒的多数の「庶」に分かれる中で、地方では士を地域リーダーとしたり、農村部の血族集団、都市部の同業者集団などの中間団体が権力と人民を接続する役割を果たしてきた。
つまり中国では伝統的に皇帝と人民の間には官僚と中間団体しかいない、そいう統治構造であり、その結果「単一王朝」への求心力・経路依存性が強い。

なので、孫文の民主主義よりは毛沢東の共産主義の方が中国にマッチしたという分析は大胆ではあるが非常に面白い。


内容的には三中全会で打ち出された方針とその背景、実現へのハードルが詳述されている。 三中全会については、新聞・雑誌記事経由でしかなぞっていなかったので、詳しく知るいい機会でもあった。


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