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アメリカ映画において社会派映画というのは立派な市民権を得ている。あのジョン・F・ケネディの暗殺事件に迫ったオリバー・ストーン監督のJFK

社会派映画と言っても、単なる社会問題を全面に出しているだけの内容では映画として中味に乏しい。映画であるからには娯楽要素に富んでいることがアクション映画にも社会派映画にも必要だとみんなが認識しているはずだ。そんな社会問題と娯楽の両方をJFKは持ち合わせている。
そのような面白い社会派映画はアメリカ映画にはたくさんあるけれど、なかなか日本映画から探し出すのは難しい。昔の映画なら黒澤明監督の悪い奴ほどよく眠るは楽しい社会派映画として挙げることができる。
最近の日本の映画は社会を痛烈に批判した映画が無く、わざわざ映画にするような内容かと言いたくなる映画ばかりだと思っていたら・・・今回紹介する沈まぬ太陽はようやく待ち望んだ骨太な社会派映画と言えるだろう。
それにしてもこの映画の最も驚いたのが、主役級からどうでもいいようなチョイ役まで凄い豪華キャスト

もちろんこの映画の内容が興味惹かれるのは勿論

しかし、この”沈まぬ太陽"と言うタイトルは皮肉過ぎて笑ってしまえる。実は映画を観る前にこのタイトルから想像していたのは、『日本よ、もっと頑張れ!』という応援メッセージが込められた内容だと思っていたけれど、実はこの映画の飛行機墜落事故のモデルであるJAL



この映画の主人公は航空会社に勤めながらも、労働組合の委員長である渡辺謙

会社からの圧力、不当な扱い、苦悩など普通なら精神的に病んでしまいそうな状況にありながらも、鬱(うつ)になるどころか逆境に立たされる毎に正義心を自ら鼓舞する。その姿は団塊の世代のお父さんの逞しさそのもの。僕も含めて若い世代には大いに見習う点があるだろう

今や不況が長続きしてしまって頑張っても頑張っても年収が200万円から上がらずに、しかも頑張る場所さえ見付からないと嘆いている人は必見の沈まぬ太陽を紹介します

![]() | 沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD] |
渡辺 謙,三浦友和,松雪泰子,鈴木京香,石坂浩二 | |
東宝 |
![]() | 沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫) |
山崎 豊子 | |
新潮社 |
国民航空の社員である恩地(渡辺謙)は労働委員会の委員長として、社員の向上、飛行機の安全のために副委員長の行天(三浦友和)たちとともに会社と対立。その恩地(渡辺謙)の正義感のある行動に対して会社は彼を長年にわたりパキスタンのカナチ、イランのテヘラン、そしてケニアのナイロビへの左遷。その間に恩地(渡辺謙)の母は死んでしまい、家族とは別々の暮らしを強いられる。
一方で行天(三浦友和)は上手く会社に入り込み恩地(渡辺謙)とは逆に出世街道をひた走る。
長年のアフリカでの左遷生活から日本に戻ってきた恩地(渡辺謙)の仕事は御巣鷹山での国民航空機の墜落事故による救援、遺族に対する世話係に回される。
会社の遺族に対する不親切さに戸惑いながら恩地(渡辺謙)は遺族たちの気持ちを徐々に掴んでいく。
数ヵ月後、国民航空会社再建に向けて政府が動き出す。政府は国民航空会社の役員を一掃して社長・副社長を代え、国民航空の会長に関西紡績会社の会長である国見(石坂浩二)を迎える。
国見(石坂浩二)は会社再建のために会長室を立ち上げ、そのメンバーに労働組合で手腕を発揮していた恩地(渡辺謙)をメンバーに入れる。国見(石坂浩二)と恩地(渡辺謙)は国民航空会社の再建に乗り出すが・・・政官財の癒着が絡み、人間の欲望の深さは映画を観てください

日本の国民は官僚支配の社会、長引く不景気、政治家の権力争いに辟易して、政権交代を望み、果たされたと希望を持ったのも束の間。なんと今の政権は脱官僚どころか官僚に頼らないと何もわからないし、景気対策は権力争いに忙しくてほったらかし、そしてかつての与党よりも露骨過ぎる権力争い

日本という国の国民は政治家になめられているのか、また政治家を見る目の無いアホばかりなのか

しかしこの映画を見ると、官僚の天下り、大企業の傲慢さ、利益誘導、不正腐敗・・・など、色々な興味深いテーマが隠されていて3時間半が一挙に過ぎる。日本は民主主義と言いながら社会悪を扱った映画が生まれにくい国である。この映画を皮切りに優秀な社会派映画がたくさん出てきたらもっと僕も日本の映画をたくさん観るだろう


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