帰宅して、明日のゴミ出しをし、生協の荷を片付け、届いた花を植えつけ、携帯を見たら着信があった。Tさんである。あらま、久々の連絡ではないか。何事かと掛けてみたら出ない。夕ご飯を戴き、新聞を広げようとしたら、掛かってきた。
いきなり。枇杷葉を採っていいか?と言う。お茶にするらしい。ファイルを渡しているでしょう。何処にやったかわからない。とのたまう。寒中に採るのがよく、この時期は新芽が出ているから採れない。と伝えるが、どうして?と食い下がる。
植物は光合成をしており、二酸化炭素を吸って、酸素を提供しているから、密封した状態になり腐るんです。以前、枇杷葉茶で飲むよう上げたのは、なくなったらしい。寒中に採ったのがあるから。と言うと暫し黙る。買ったら高かったらしい。
少しため息も出るが、根気佳く説得する。暫く、世間話を交え、我が家にあるのでよかったら、分けて上げる。と話す。遠慮がちに承諾。そりゃねぇ、代金をもらうのは簡単ですし、要らない訳ではありませんが。でもそれっきり縁の切れ目。
恩は押し付けてはいけませんが、困っているのがわかっていて、見過ごせないでしょう。況してや、肝心な時に思い出してくれたのです。感謝しなくてはなりません。全ては枇杷葉のお蔭です。ありがたいですね。因果応酬とも言いますか。
これまでに、騙されたり、恩を仇で返されたことは数え切れませんが、結果的にはそういう性格や事情が明るみに出たのは、よかったのです。失った物は還ってきませんが、捨てていい物だったのだ。罰が当たるのは騙した者にだ。
明日は休みで、枇杷葉茶を持って行く。と言ったら、とても喜んでいる。素直と言うのか、純粋なのだ。まあ、私の友人の殆んどは、人が善い。計算高くもなく、お人好しが多い。金はないが心が広く、頭脳明晰な人が多い。心が温かい。
早春の枇杷葉。この数日、その季節に逆戻りした。セーターを着て行った。室内は暖房が利いていたが、風が冷たかった。