(資料画像、お借りいたしやした)
ぜんたい、恵方を向いて巻き寿司を丸ままガブリと行くだなんて、
誰がやろうと言ったのか、そんな風習うちにはなかった。
あれはやっぱり庖丁を入れて、一切れ二切れと食った方が美味い。
切った断面の美しさも職人の腕の見せ所で、中具の色どりや配置、
そいつがきちんと真ん中に来てるか、ご飯が均等に巻かれているか、
そういうものも巻き寿司の楽しみの一部な訳なんで。
なんだかあらぬ方を見て「喋っちゃいけないのよ」なんて言いながら
ただただヘンテコな黒い棒を口に押し込んでムシャムシャやってるのは
どうも腑に落ちず、気色が悪い。
だいたいね、花街で始まったというのが通説なんですぜ、旦那。
遊びに飽きた旦那衆が芸舞妓に「これは丸のまんま食べるもんや」ともっともらしく言い、
おちょぼぐちに黒い極太海苔巻を頬張らせ、目を白黒させるのを見て、ニヤニヤと楽しんだ。
そんな“どエロ”な遊びに端を発している(見て来た訳ぢゃないが)。
そいつが堂々と大手を振って、家庭のお茶の間に入ってくるのは、どうもなんだか
一家だんらんの場に、幇間が「いよっ、こんちまた」なんて言いながら入ってきたようなもんで、
もろ手を挙げて楽しめやしない。
77年に大阪の海苔商業組合だかなんだかが、海苔の売り上げを上げるために
頭ひねってやり始めたって言うけど、(なかなか商売人やのぅ)
そういうのは二、三年ですたれていただきたいものだ。
これだけ続くというのは、寿司屋も乗っかり、穴子屋が乗っかり、伊達巻き屋も乗っかり、
スーパー乗っかり、コンビニ乗っかり…そういう連中にまんまと客が釣りあげられた訳で。
大阪ぎらいの東京人まで無反省にやってるんだから、シャクにさわる。
だいたい一本丸ごと食った後の胃の重たさは、不快極まりない。
やっとんのかえ!