めったと京都駅界隈で飲むことはないが、河原町付近しか知らないというのも不幸な話である。
「へんこつ、知ってるの?」
「えっ、先輩も行ってはるんですか・・・?」
ある時、そんな話になり、この日は久々に京都在住のM君、N君が同道。
まずは京都駅スグにある、おでんの「へんこつ」。
ここがなかなかのへんこつさ加減。
最初、テール自慢のおでん屋があると知り、行ってカルチャーショックを受けた。
実に京都めしの概念がガラガラと音を立てて崩れ去るおでんだった。
ご覧のように、赤味噌ベース。 グラグラと煮込む血の池地獄のごとき大鍋である。
「底」という注文ができる。 ここではそいつをシャレて、「サルベージ」と呼ぶ。
底にあって長時間煮込まれて、よく味のしゅんだおでん。
しゅんだ…は、大阪弁で「味の染みた」という意味だ。
すじとこんにゃくのサルベージといえば、これが出てくる。
美味! 濃厚だが、見た目よりはずっとあっさりと食べられる。
「底タケ」というと、これ。 タケノコである。
近在のサラリーマンたちが夕方早めにやってきて、サッポロの赤星抜いて始める。
はまれば、これ一辺倒になる恐れあり。 へんこつそうな中年客多し。
戦後すぐからだが、おでんに切り替えたのが昭和27年ごろとか聞いた。
いかに底といえども、さすがに当時から炊き続けている具材は、どんなに引っかき回そうがない。
あれこれメニューはあるわけではない。 京風剛腕みそおでんっつうか。
キュウリの漬けもんがアッサリとイイ感じ。
さて河岸かえようと、七条通まで出て見ると、雰囲気のいい建物が目につく。
大正年間あたりの店舗建築。
「きょうとなごみ館」。 もと銀行だった建物で、団体用のレストランがあり
土産物などを売っている由。 修学旅行の学生などを西本願寺見せて、
ここへ放り込もうという作戦らしい。
こちらは創作フレンチ 「グランヴェルジュ・京都七条クラブ」。
婚礼もするらしい。
1Fに入るのは「なか卯」。ファサードに富士ラビットの金文字。
富士重工のスクーター、ラビットといえば、少年ジェッタ―が乗ってたヤツか?
2Fはカフェになっているらしく、詳しくはこちらの方が。
http://michiyo0520.blog20.fc2.com/blog-entry-1532.html
大阪は、街全体の意匠などという知恵がまったく働かない、どうしようもない土地なので、
使い勝手とか合理性の旗印のもとに、勝手にどんどんつぶしてお終いとなる。
言っておくが、明治大正の建物は二度と建てられない。
好き勝手やった道頓堀のていたらくを見てごらんな。 味も情緒もクソもない。
そして、情緒のない街からは必ず客は去る。
名前がかっこいい、リド飲食街。
もう少し画面をロングにひくと、京都タワーと、どでかい壁のようなヨドバシカメラの威容。
数メートル隣りに、キョーラク飲食街というのもあったが、火災にあい閉店。
リドは、小さい建物の真ん中をズドンと通路を通し、両側に飲食店が並ぶ。
京都にあって京都にあらず。 雪深い津軽の漁師町の場末の飲み屋街のようである。
「門」はちりとり鍋の店。
ホルモンをコチュジャンベースのタレで食べさせる。
特注の鍋かと思ったら、こういうのは道具屋筋でいくらも売ってるそうだ。
最後はうどんか、ごはんという手もあろうが、
なんの、まだまだ今夜は続くので、ここでシメるわけにはいかない。
七条通沿いにある、「はなまる串カツ製作所」へ。
ここもものすごい勢いで伸ばす、サントリー系ハイボール酒場。
壁がトタンぶきになっていて、チープ感を演出。
イメージを裏切らない串カツ。1本80円の安さ!
牛ロースも80円にして、しっかりした牛肉で美味。
店から、1人2本までという泣きが入るわけだ。
メンチカツもこりゃ上等上等・・・。
そうそう、本来串カツとはサクッと食って、ぐいっと飲み、ポイッと出るものだった。
さぁて、次なる店へとまいろうぞ。 京都の夜はまだ始まったばかりだ。