かすうどん、天かすうどんではないぞよ。牛の小腸を煎り付けると、
自身の油で揚がってしまう。この油かすをば、いろいろな料理に使う。元々は捨てられる運命にあったものだが、懐ろが寂しいという事情があったのだろうが、こういう“すたりもの”を生かす知恵はいかにも関西人。体面など気にせず実質本位で、まことに生きる力を感じるのだ。
そんなかすうどんも、ここんとこ、ずい分とメジャーになった。矢田の屋台店辺りから始まり、松原や藤井寺へと広まり、新町にあり、今や千日前に 3店舗のかすうどんトライアングルができている。 どれだけ濃いものかと思うかも知れぬが、これが意外にあっさりでお勧めできる。
6年前に出した相合橋筋の『ろくつぼや』。はりはりうどん・かす入りがまことに結構。¥550 だしはこのぐらいの濃度がほしい。これのヌキもあって、これ吸いながら一杯飲める。このレベルだからうどんはキンレイの冷凍うどん。だしも悪くない。
きざみうどんの揚げのように見えるのが油かす。これが香ばしさと脂分を補い、水菜との相性よろしく、たちまち「しろなと油揚げのたいたん」みたいな間柄となる。
今年できたという千日前筋沿いの『かす庵』かす昆布うどん定食¥700 かす+昆布の両方からええダシが出ることに期待。ダシに力が無い。それにここのかすは粉みたいなもんで、ガクッ。形で買ってきて、自分のところで削らねば。これではかすのかすではないか。かすは噛みしめることができなければよくない。「うちは、他の店に較べてかすの量には自信ありますねん」とろくつぼやの主人が言う通り。「これがかすか…」と客が納得せねばリピーターにはならぬだろう。
しかし…うどん、お好み焼き、焼きそば、それぞれにかすの美味さに感ずいてきて、その割に牛の屠畜量は増えないために、かすまで価格が上がり値が上がり、入手は大変みたい。
がんばれ、すたりもの!とエールを送りたい。
早くマベサクさんに紹介しておけばよかった。
R176と内環のクロスした辺りにあってね、かすうどん、と表に出てるんやけど、マグロも美味しくて安いねん。昼間は定食系をやってて、夜は飲み屋でした。おにいちゃんが一人でやってるから時間はかかるけど、丁寧にかすを切ってはったよ。この頃は、素人さんも市場に買いに行きはるけど、僕らから見たらえらい値段でスカみたいなマグロ買わされてますわ、なんて話もしてくれはった。おにいちゃん、今頃どないしてはんねやろ。名前は松屋でした。
そんな人ほど長く続けて頂きたいのやけど、
その実、台所は火の車で、結局短命に終わってしまう、なんていうことが多々あります。せつない。
捲土重来!再びどこかでええ仕事を見せてくれはることでせう。