昨年の12月、89歳で世を去った評論家、立命館大学国際平和ミュージアムの館長などを歴任した加藤周一さんの「お別れ会」が東京であり、加藤さんを偲んで1000人の人が参列した。ゆかりの人が弔辞を述べたのが、23日の朝日新聞に出ていた。
大江健三郎
森鴎外が、エドムント・ナウマンの日本批判に対して書いた文章を加藤さんは高く評価されています。「相手を理解せよ、同時に自分の弱点を見抜け」と言っています。これよりもよい、若い人への助言はないでしょう。
水村美奈(夏目漱石の「明暗」の続きを「続明暗」として書いた)
(加藤さんにお目にかかると)そこだけがろうそくに照らされ、シャンパンが抜かれるような、生きていることが祝祭であるという時間が流れ始めるのです。それは加藤さんのず抜けた知性のせいですが、ご自分からは何一つ相手には求めないという決意が人格の芯にあり、与え続けたのです。その潔さが、加藤さんと一緒にいる時間をかくも至上のものにしたのだと思います。
吉田秀和(音楽評論家)
あまりにいろんな世界の話題を解説するので、ぼくは「あなたは世界連邦政府の外務大臣だね」と冗談を言ったことがある。時代を洞察し、判断をし、ユーモアを忘れない。加藤さんはアイロニカルで反語的な言い回しの名人だった。
鶴見俊介(哲学者)
会うたび話すたびに、心棒を感じました。軍国日本に不服従だった人の心棒であり、日本の知識人にまれにしか感じないものでした。過去・現在・未来のどんな戦争に対して話すときも、感じるものでした。