カンヌ映画祭で20数年ぶりにパルムドールを受賞した「万引き家族」を観た。
最初は、東京の下町で暮らす貧しいながらも仲のいい「家族」と思っていたが、これが全く違っているところに、面白さを感じて、その後はストーリーの展開に引き込まれていった。
「死んだ親の死亡届を出さずに年金を受給し続ける」という実話をもとにした作品だ。GDP世界第3位の日本、豊かに見える日本の隠された一面に光があたる。
「家族の絆」は揺るがぬものとして存在しているとされているが、実際は、いろんなところでほころんでいる。崩壊している夫婦、家庭内暴力、育児放棄。ばらばらにされてしまった個人が、いつの間にか集まってきて、貧しいながらも楽しく明るい「家族」として暮らしている。実の家族よりもよほど居心地がいい。
暮らしは、祖母の年金と父親の日雇い収入、それに万引きで成り立っている。しかし、こうした暮らしは祖母の死によって、大きくぐらつき、いろんな問題が噴出してくる。息子・祥太は万引きを続けることに違和感を感じるようになった。これは、日々の暮らしさえできればいいという大人の感覚では出てこない気持だろう。破綻するのが見えているのに実際に破綻するまで、何もできない大人たちに対して、息子・祥太が、現状を打開する行動に出る。
そこから、物語が急展開して、これまでの「家族」が崩壊していく。それと同時に、息子・祥太の新しい人生が始まろうとするところで映画が終わる。
下重暁子が「家族という病」を著し、山田洋二監督の「家族はつらいよ 3」が上映されている。今日、当たり前のような「家族の絆」を改めて考え直すことが求められているような気がした。