線翔庵日記



おまつり、民謡、三絃、名水、温泉、酒、そして音楽のこと…日々感じたことを綴ります。

三木稔~三味線独奏曲《奔手》

2011年12月13日 20時22分15秒 | 音楽
12月8日に作曲家・三木稔氏が亡くなられた。享年81歳。
邦楽器を用いた音楽の作曲で知られ、「日本音楽集団」を創設、海外公演も多く、日本音楽への貢献は計り知れない。大変残念なニュースだ。

特に、学生時代に《奔手》という三味線の独奏曲を知った。音楽の先生に紹介されて、1度レコードを聴いた。何とも斬新な曲。三味線の調弦は大体、完全5度と完全4度の組み合わせからなることが多いのだが、この《奔手》は減5度と増4度という、まあ…普通あり得ない調弦なのだ。

そして伝統的な弾き方ではない、本当に前衛的な感じのパッセージが続く。かと思えば、途中から、伝統的な二上りになって、安定した雰囲気になる。しかも、どことなく伝統的な感じが見え隠れしつつも、急速なパッセージの下行形で、ドキドキした雰囲気で曲を閉じるのだ。

この曲の初演は、長唄三味線の杉浦弘和氏。1974年だそうだ。
そしてある年、東京へ出かけたとき、レコード店で偶然、この曲を収録されたLPを見つけた!演奏はもちろん杉浦氏のソロ。


【三木稔 選集】Vol.Ⅰ 日本音楽集団 めばえ


細棹三味線のキレのある演奏は、何とも耳を疑わんばかりのテクニック。


一方、自分は学生時代、現代邦楽の三味線の曲に関心があった。そして現代三味線演奏家の西潟昭子女氏を知った。三味線の作品を作曲家に委嘱された新曲や、現代邦楽作品の演奏を発表されてきた。

やはり、このアルバムの中にも《奔手》があった。西潟女氏は山田流地歌箏曲の演奏家であるので、杉浦氏の雰囲気とはまたちがった感じ。鋭さと力強さがパワーアップした演奏。


そして、西潟女氏の弟子でもある、現代三味線演奏家の野澤徹也氏の演奏も聴くことができた。


野澤徹也による【三木稔 三味線作品集】


野澤氏の演奏は力強い。いや、それだけでなく一音一音が丁寧に弾き込まれた演奏。野澤氏の《奔手》は、鋭さの中にも叙情的な感じが味わえる。

自分は、野澤氏のライブで《奔手》を2度、生演奏を聴いた。やはりCDでは感じ取れない、撥さばきの鋭さや弦を擦る音など、ライブならではの臨場感で味わうことが出来た。

その後、楽譜も手に入れて、自分もちょっと弾いてみた。

…とても弾けない(涙)

《奔手》は現代三味線の楽曲の中では、名曲の1つだと思う。
三木稔氏の訃報をきき、またアルバムを聴きたくなった。

心より、ご冥福をお祈りする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする