岩波文庫「「絶対」の探求」を読んだ。物語の最後半、錬金術に憑りつかれたクラース老人が長女のスペイン旅行中に家財道具をすべて(長女の部屋のものを除いて)売り払ってしまう場面があるのだが、その際、彼の先祖の肖像画はイギリスのスペンサー卿に売られたというくだりがある。このスペンサー卿というのは第二代スペンサー伯爵のことであり、その子孫に1997年にパリで交通事故死したダイアナ元英国皇太子妃(ウイリアム王子の母親、ジョージ王子の祖母)がいる。この本が出版されたのは1834年だから、その時、スペンサー伯爵の子孫が皇太子妃になるとは想像もできなかっただろうし、その劇的は死はバルザックの小説以上だ。パリで事故死というのも偶然。