不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・ウォーキング

2015年03月25日 13時59分50秒 | 文芸
ウォーキング

歩け歩け

なにも考えない
もくもくと
ただ もくもくと

二十キロ
健脚コース

なんのためらいもなく
選んだ
自信過剰?無謀?

いや
忘れていた
年齢を
肉体の衰えを

息ぎれ?
気づかれたくない
周りは同世代

歩け歩け
もくもくと……
なにくそ
ただただ もくもくと

歩け歩け歩けー!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

わたしのファション?

2015年03月25日 09時50分44秒 | つぶやき
 田舎で育ったおかげで流行とはとんと縁のない生活だった。高校を卒業するまでは学生服と白いカッターか開襟シャツで通した。
 社会人になってからもその延長の地味で目立たない服装しか知らずにいた。
 そして出合ったのがGパン。ローハイドや名犬リンチンチンなどアメリカ西部劇の登場人物のはく、いかにも丈夫で男っぽいズボンに魅力を感じた。ダボダボのおっさんズボンはもう嫌だった。お年頃だったのである。
そんな時、母が買って来たズボンはいつもはいているものとは全然品物が違った。群青色が印象的で、ゴワゴワした手触りも新鮮だった。それにタグには、なんとテンガロンハットをかぶったカウボーイらしきイラストが!もう感激ものだった。
田舎の若者が刺激を受けるとどうしようもない。もう四十数年、Gパンいや、ジーンズを手離せないでいる。安くて丈夫で長持ち。しかもファッション性はちゃんとあるのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小説・ぼくらの挑戦ーそれは(その2)

2015年03月25日 00時14分43秒 | 文芸
 埃を被るだけになっていた脚本が日の目を浴びたのは、誠悟の妹、奈津実(なつみ)のおかげだった。まだ高校生だが、かなり大人びた考え方をする。誠悟が苦手にするタイプの相手だった。その妹に誠悟は仕事から戻ったところを捉まった。どうやら待ち構えていた様子である。
「お兄ちゃん、この脚本、もう読んだん?」
 奈津実の手に、あの脚本があった。
「こら、お前、また勝手に俺の部屋へ入ったな」
「そんなこと訊いてへんのん。これ読んだのんて訊いてるんや。どない、読んだん?」
「あ、いや……」
 妹に口で勝てたことがない。
「勿体なあ。この脚本よう出来てるわ。これ、お兄ちゃんらがやるのん?」
「そんなん、まだ決まっとらんけど……」
「それやったら、うちらの演劇部でやらして貰うてもええわな。ええやろ?お兄ちゃん」
 奈津実は加古川中央高校の演劇部で部長を務めてバリバリやっている。自称芝居バカを普段から吹聴して止まぬところがあった。厄介な相手に脚本を見つけられてしまったようだ。
「アホ言うな。そんな勝手な真似出来(でけ)るかいな。それ大事な預かりもんなんやで」
「大事な?そこらに放り出してあったで。うっすらとホコリ被ってたわ」 
 妹の猜疑心に満ちた目をまともに見られなかった。
「やかましいのう、奈津実は。とにかく中川先生から直接預かったもんなんや」
 中川先生は演劇をやっている人間で知らない者はいない。奈津実の演劇部も何度か臨時に指導を受けていた。
「中川先生の作品やったんか。そやろなあ。アアー、残念!」
 いかにも無念極まるといった顔を作って見せた奈津実は、諦め切れないのだろう、もう未練タラタラといった感じで脚本を誠悟に返した。そしてひと言、ズバリと言ってのけた。
「お兄ちゃん。絶対読みや。読まな損するで。中川先生の名作のひとつになるさかい、この作品は」
「そうか…分かった」
 誠悟は妹の気迫に呑まれた格好で頷いた。
 
結局、誠悟は奈津実に誘発された形で、中川先生の脚本を読むはめになった。
 几帳面な中川先生の字は実に読み易かった。『壁よ!』と題された脚本は若い男女の結婚物語を描いていた。それも、差別と言う宿命を生まれながら背負わされた被差別の女性が、を取り巻く世間が築いた堅牢そのものの壁を、彼女を理解してくれる被差別外に棲む男性の深い愛情を得て、差別を共に乗り越えて結婚に至るストーリーだった。
 とはいえ、決してハッピーエンドで終わる定番の物語ではなかった。どちらの身内からも理解されず責められる一方の四面楚歌の状況下、孤独なはざまに追い込まれてしまう若い二人。彼らが直面する差別の過酷な現実が、克明になぞるような筆跡で丁寧に、丁寧に描かれてあった。
 脚本に描かれた若い二人は、香住彩恵と小堀啓介。啓介が三つ年上だった。青年団活動を通じて彼らは知り合った。最初の出会いはごく平凡なものだった。青年団活動に生真面目に取り組む先輩後輩に過ぎなかったのである。
 
彩恵も啓介も青年仲間から頼りにされるリーダーに推された。加古川・印南地区の連合青年祭イベントを企画しその運営に駆け回る啓介とサポートする彩恵。試行錯誤を繰り返しながら懸命に取り組むリーダーたちの姿に触発されて、青年団のメンバーは積極的に動いた。半年がかりの大事業だった。
 イベンチは成功裏に終わった。
 その頃には、彩恵が啓介に抱く気持ちは、先輩に対する尊敬の念から、淡い恋心に変化していた。啓介も同様に、一生懸命にサポートしてくれた彩恵のひたむきさに、いつしか心憎からず思い始めていた。
 そんな二人の気持ちに気付いた青年団仲間の好意もあって、彩恵と啓介の間に芽生えた愛は、欠片から次第に確かなものに育っていった。
 啓介は彩恵にプロポーズした。
「俺たちの家庭を一緒に築いてほしい。どんな困難があっても二人でなら、きっと乗り越えていける」
 啓介の言葉に秘められた覚悟と決意は、彩恵が被差別の住人だというだけで生じてくるであろう、あらゆる障害を危惧するからである。
 啓介の危惧は当たった。彩恵との結婚に至る道程は、想像以上の困難が付いて回った。壊せないと思わせた強力な壁は、双方の親を筆頭に、それぞれの親戚がこぞっての猛反対だった。しかし、彩恵と啓介が確かめあった愛が築いた砦は、決して揺るぎはしなかった。
 最初に折れたのは啓介の親だった。
「わしらは何もしてやれへんけど、お前らが、それでも負けんと頑張る気でおるんやったら、もう反対はせえへん。どない回りが地団駄踏んだかて、お前らの幸福は、お前らが、そのてで掴むしか手に入らへんのやからな」
 啓介の父はポンと息子の肩を叩いて言った。背なか越しに何度も頷く母の姿が目に入った。

 彩恵の家族は、啓介が結婚してに住む気でいるのを知って、ようやく二人の結婚を認めた。
「余所もんのあんたは、絶対わいらもんの仲間になんど、どない足掻いたかて、なれんっちゅうことが、いつか分かるわいな」
(つづく)
(平成6年度のじぎく文芸賞優秀賞受賞作品)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする