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こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・父の自慢

2015年03月26日 14時53分50秒 | 文芸
父の自慢

女の子と男の子が
二人づつ
われながら
みごとな産み分け

「一姫二太郎。やったな」
「お前、果報者だよ」
友人の賛辞が
心地よかった
あの日

この春
さいごのひとりが
大学生になる

社会へ
送り出した娘と息子
近況は?
ただ元気らしい

それで充分
父はひっそりと
見守ってやろう

きみらが
どこかで
健やかに
逞しく
生きている
 
それが
わたしの自慢

それで
いいんだ
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2015年03月26日 09時27分08秒 | 日記
いい陽気。寒さで凍えていたのが嘘みたい。庭先の桜の大木も、自分の晴れの出番を待っているみたい。去年はいろいろあって、ゆっくり桜を楽しめなかったっけ。この春は、おいしいものを作ってサクラ見物をしようかな。人生もあと残り少ないいま、一度一度の春を満喫することを心掛けなくちゃあね。さて、桜を愛でながら味わう献立は?何人分?(もしかしたら私ひとりでってことになりかねない。寂しいけど、みんな仕事やなんやかやで忙しいからな。年を取るって、こんなことなんだよ)いやいや、季節を楽しめる元気さがあるだけで、感謝しなくてはね。ご馳走のため、今日から倹約だ!
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子育ての季節

2015年03月26日 09時01分48秒 | 文芸
朝6時に帰宅、2時間ほど眠って、妻と交代する。夜勤専門の私と8時から出勤する妻の共働きで4人の子育てをしている。夕方の出勤まで、否応なく育児は私に回ってくる。
 夜中、弁当の製造に追いまくられ、昼間は赤ん坊の世話。小学生と中学生の子供3人は学校だから、赤ん坊と私はサシで勝負(?)。
 粉ミルクを溶いて哺乳、おしめ替え、あやす……そして問題は添い寝。これが難問だった。夜働いているから、眠いのは当然。添い寝で油断すると寝入ってしまいかねない。とにかく命を削る思いで奮闘である。
 4時に妻が帰宅すると、とにかく眠る。3時間眠れば、もう出勤の時間。仕事に入れば気が抜けない。包丁を使い、ベルトコンベアーや他の調理機械を扱うので事故や怪我が怖い。必死のパッチで目を見開いた。
 まるまる2年間、仕事と子育ての両立を余儀なくされた。あれが可能だったのは若さのおかげだったと今更ながら思う。
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小説・ぼくらの挑戦ーそれは(その3)

2015年03月26日 01時35分34秒 | 文芸
 最後まで反対し続けた彩恵の伯父は、啓介の方を一顧だにせず、そう吐き捨てた。

 彩恵と啓介の結婚式は、青年団仲間の祝福を受けて、賑やかで心温まるものとなった。
 彩恵の実家に隣り合わせた空き家を借りて、二人の結婚生活は始まった。彩恵の母親の気遣いもあって、表向きは無難そのものだった。
 だが、差別という陰湿で理不尽なものと常に向かい合って生きてこなければならなかったの人たちとの意識のギャップを、そこで暮らし始めた啓介は思い知るはめになった。啓介が学び得ていた差別のような生半可なものではなかった。彼らは差別の真っただ中を、今も生きているのである。
「焦ったらあかん。啓ちゃんがなんぼ焦ったかて、それで何かがすぐに始まらへんし。ここのみんなは今も昔も否応なしに差別される環境に置き去られたまんまなんよ。人が作った差別屋のに、差別されるうちらかて人間なんやのに、どないも出来ひんの。不合理やと分かってても、そこで生きていくしかないんやから。その世界を、生きて来た世界が丸っきり違う啓ちゃんが、本当に理解しようと思うたら、そら気の遠なる必要になるんちゃう?そやろ。だから、その時まで焦らんといて。私がいつかて傍におる。ゆっくりと一緒に歩いていこうよ。な」
 啓介の焦燥感を間近で感じた彩恵は、そう何度も宥めたが、それは啓介になんら救いにならなかった。
 の寄り合いで啓介はつま弾き同然だった。啓介が発言すると、顔をそむける者がいた。ひとりの老人は啓介を偽善者と呼ばわって、険悪な雰囲気になった。
 啓介が差別を考える会の設立を呼びかけても反応は鈍く、口調から「余所もんが余計な真似はせんといてくれ」と苦情を言われる始末だった。
 しかも、に婿入りした形となった啓介を、親戚や昔からの友人や知人、その総てではないが、敬遠の態度をあからさまにする者が目立ち始めた。啓介の繊細な心は確実に苛まれた。啓介はノイローゼから鬱状態に至った。
「うちらの赤ちゃんが出来たんよ」
 彩恵が妊娠の喜びを報告しても、啓介の反応はイヤになるほど鈍かった。
「彩恵、済まん。俺のしたことは何の意味もなかったんやな。ムラのもんも、こっちのみんなも、迷惑なだけやったんやで。俺、彩恵も幸福に出来へん。だらしない男や、ほんまに。彩恵、ごめん、ごめんやで……」
 ブツブツ言いながら涙ぐむ啓介に、彩恵はどうする術も持ち合わせていなかった。愛する二人には幸福の証しとなるはずの赤ちゃんの誕生でさえ、もはや何の意味もなさぬほど、啓介の精神状態は極限近くまで達しかけていた。
 彩恵が妊娠を報告した、その夜、啓介はフラフラと定まらぬ足元で家を後にした。意味不明の呟きを口にする啓介を、夜の闇にまぎれて見えなくなるまで見送った彩恵は、夫が公民館で市が催す『市民による差別を考える会』に出席したと思い込んでいた。
 だが、啓介はその笑顔を彩恵に二度と見せることはなかった。
 啓介は近くを走る加古川線の踏み切りに入り、列車に跳ねられて、その若すぎる生涯を負えたのである。
 事故とも自殺とも判断の付きかねる死だった。彩恵は思いたくはなかったものの、啓介が自ら死を選んだように感じた。
 啓介は、差別という得体の知れぬ、それでいて堅牢過ぎる壁に阻まれ、あがいてあがいて、とうとう力尽きたのである。
 彩恵は暗がりで、ただひとり歯を食いしばりながら、むせび泣いた。

「それみたことか。わいが言うた通りになってしもたがな。余所もんが余計な真似しくさるさかい、あないな犬死にせなならんのや」
 大声で使者をののしる伯父に、彩恵は怒りに任せて、その頬に手を飛ばした。
「な、なにするんじゃい、お前は」
 彩恵は声を荒げる叔父を睨みつけたまま、胸のうちに溜め込んでいた思いを吐き出した。
「あのひとは、私の夫、啓介さんは、犬死にしたんやない!あのひとあうちらが受ける理不尽な差別を何とかしとうて頑張ってくれたんやで。そやないか、伯父さん。それをみんなは、みんなは、何もせんと、それどころか理不尽に攻めt、その挙げ句、見殺しにしてしもうたんや!」
 伯父も家族の誰も閉じた口を開けなかった。
「絶対に、あのひとは犬死にしたんやい。いや、犬死ににはさせへん!うちが、うちがあのひとの意思を継ぐ。ううん、うちだけやない。うちのお腹には、啓介さんの赤ちゃんがおるんよ。この子が、また啓介さんとうちの後を継いで、あの憎い差別と闘こうていくんや!負けへん。負けへんで!絶対に」
 胸を張る彩恵の覚悟を前に、伯父らは顔を伏せた。

彩恵は、天国に登った啓介が、彼女とお腹のわが子がこれから差別と闘っていく姿を、ちゃんと見守ってくれると信じて疑わなかった。
きっと夫は喜んでくれる。
 彩恵は静かに手を合わせて黙とうするのだった。
 脚本は彩恵の姿を彷彿とさせて幕となっていた。悲劇で終わらない、新しい時代につなぐ何かを感じさせた。
(つづく)
(平成6年度のじぎく文芸賞優秀賞受賞作品
 
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