帰りたい

家島へ

アマチュア劇団の学校公演で渡ったのは

三十数年前。

姫路港から真浦まで

一時間ちょっと。

波も穏やかで快適だった。

一泊二日の日程で、

公演を済ませてすぐ

真浦出港の船に乗船の予定だった。

ところが、

台風の影響で船は出港しない。

土・日利用の参加メンバーには

月曜の仕事が待っている。

焦ったが、

時化ではどうしようもない。

岸壁から眺める海は、

雨と風で水平線すら見えない。

岸壁に打ち寄せる

波の激しさに息を呑んだ。

恐怖すら感じて、

帰るのを諦めた。

まんじりともせず夜を明かした。

朝、

急いで外へ。

宿舎のすぐ前に

広がっている海の様子に、

みんなキョトンとなった。

海は穏やかな表情を

取り戻していた。

きのうの荒れようは微塵もない。

海の快適さと怖さを

思い知らされた船旅だった。