こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

眠い

2016年07月22日 01時13分48秒 | 文芸
「お~い、おるかいのう」
父だ。朝方までパソコンに向かっていたので、ちょうど熟睡中の時間。
「寝とんのか?」
勝手知ったる息子の家。居間に上がり込んできた。
実は、わたし、寝室で寝ることはめったにない。居間の片隅に作業机を置いて好きなことを夜っぴてやるので、眠くなると、居間にバタンキューなのだ。ここがB型人間の自由奔放な姿なのだ。(格好きめても、ただ邪魔臭がり屋に過ぎないのである)
「忙しかったんけ?」
のぞきこまれては、眠っているわけにはいかない。
「なんや?」
「起こして悪いのう」
(悪い!眠たいんや)
心の声は、頬笑んでごまかす。
「あんのう」
「ん?どないしたんや?」
「これやるわ」
突き出した父の手にテッシュの箱が。怪訝な顔の息子を見て取ったのか、
「ホールインワンや」
「は?」
「久しぶりのホールインワンじゃ」
やっと父の言わんとしていることを察した。
父は村の老人が楽しむ
グラウンドゴルフのメンバーである。
もう5年以上やっている。
朝8時から10時過ぎまで、 
ボール打ちを楽しんでいる。
数年前から足が痛い、膝が痛いと言いながらも、
その日が来ると高台のグラウンドへ向かう。
93歳はメンバーの中で最高齢者らしい。
その父が、うれしさを隠さず報告している。
「これ賞品じゃ。やる」
「おおけに」
ありがたく押し頂いた。
父の満足感は満たされたに違いない。
週一回の定期便である。
この定期便がなくならない限り、
父は矍鑠たる長寿老人であり続けるだろう。
「ちょっと、今日は眠いんじゃ。もう寝る」
「ほうけ。そら邪魔したのう。ふな帰るさかい」
「ああ、気ーつけてな」
そんなとりとめのなさすぎる
やりとりが週一回ある。
幸せな親子だと、ぼんやり感じながら、意識が遠ざかる。
たぶん、昼前には目が覚めるだろう。
コメント
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