こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

線香花火

2016年07月24日 00時54分21秒 | 文芸
夏休みになると、

いつも思い出す。

 今は亡き兄と、

よく花火を楽しんだ。

性格は正反対。

年子の兄弟なのに、

花火の好みは極端に違った。

兄は打ち上げ花火。

私は手持ち花火。

中でも線香花火が

好きだった。

 打ち上げ花火に火をつけるのは

兄の専属。

私は怖くて点火できない。

ドーンと上がった花火を眺めるだけ。

それでも花火に仕込まれた

小さい落下傘を拾いまわるのは

楽しかった。

 手持ち花火も激しく噴き出すのは

兄に任せた。

「おびんたれやのう」

とからかいながら、

兄は得意満面に

花火をかざしたものだ。

 打ち上げも仕掛けも怖かった私が、

線香花火だけは違った。

火薬部分が火の玉となって

か細い火花を散らしながら、

ポトンと落ちる時間の競い合いは、

なんといつも兄に勝った。

「こんなもん花火やあるかい」

 負け惜しみで

文句をいう兄が

忘れられない。

 兄が亡くなり、

打ち上げ花火は買わなくなった。

最近は線香花火を

ひとり楽しんでいる。
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