こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

指輪

2016年10月07日 00時57分49秒 | 日記
今日は妻の休日。
居間でうたた寝中だ。
起こすまいと動きも慎重になる。
咳払いすらグッと抑える。

スーパーでサービスチーフの彼女、
毎日てんてこまいしている。
13若い妻は、いまが一番充実しているようだ。
夫のわたしは老いぼれつつあるというのに。

スーパーで最近の若いアルバイトの無責任な行動に、
翻弄されて、休日でも店舗に駆けつけたりと大変だ。
家でシフトを組んだり、指導プランを立てたり、
疲れをためっぱなしなのだ。

そんな彼女と結婚したのは、
彼女が20歳になったばかりの時。
事情(?)が出来て急ぎの結婚式へ突っ走った。
喫茶店を始めたばかりで、
懐事情はカツカツだったが、
そんなことは言ってられない。

「これ結婚指輪や」

 渡した指輪はいわくがあった。
六年前、別の女性と結婚直前の解消で、手元に残された指輪だった。

 彼女はその事情をよく知っていた。
それに、当時の私が新たな指輪を購入できない経済事情も。
そのうえで、彼女は許して受け取ってくれた。

 結婚式はちいさくて古ぼけた神社。
新婚旅行はシーズンオフの京都往復で形だけ。
そして彼女はあの指輪を大事にはめ続けてくれた。

 結婚十年目。彼女の誕生日に二人で貴金属店へ。
妻の胸には三人目の赤ちゃんが眠っていた。
上の二人はお留守番である。

「気に入ったものを選びなよ」
「うん。でもいいの」
「大丈夫や。一緒に頑張ったからな」

 彼女が選んだのはシンプルなダイヤのエンゲージリング。
十五万円だった。
彼女らしい控えめな選択が頬笑ましかった。

「頑張ったご褒美やから、もっと高いの……」

「いいの。子供やあなたと一緒にいられるだけで」

 涙を呼ぶ妻の言葉を聞き、仮の結婚指輪はついに役目を終えた。

あの指輪は、その後どうなったのか?
妻に尋ねたことはないから、まるで見当がつかない。

すやすやと寝入る妻をぼんやりと眺めていると、
彼女の若さとたくましさが、
頼りない私を、
この日まで引っ張り続けてくれたんだなあと
とりとめもなく考えてしまった。

あ?おのろけと勘違いされてしまうかな。(苦笑)

コメント
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