こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

よき日よき家族

2016年10月23日 03時30分54秒 | 文芸
まちライブラリーの登録が出来ました。
根日女創作倶楽部@まちライブラリーと命名です。

10月30日が植本の日だとか。
がぜん忙しくなります。
畑のど真ん中に大きな木のテーブルを設けて
本と自然とひとがふれあえるミニエリアをと、
土を掘り、盛り上げに着手。
やはり、力仕事……。

例によって思い出の原稿です。

    明け方の贈り物

 夕方から明け方にかけての深夜勤務についてから、
子どもたちとすれ違いの生活が始まった。
出勤するときには子どもたちは遊びに出ているか、
まだ学校だったりするし、
帰宅したときは夢の中なのだからしかたない。
 その日も明け方、
眠い目をこすりながら帰宅した私が玄関を開けると、
なんと玄関先に子ども三人と妻が揃ってお出迎えである。
「お帰りなさい!」
「お仕事ご苦労さま、おとうさん」
 正直驚いた。
それにくすぐったい。
「なんだい、お前ら、おどかすなよ。
それにまだ眠たいやろが」
 照れ隠しに質問の連発だ。
「お風呂、いい湯加減に沸かしといたから、すぐ入ったらええ」
 と小六の長男が進める。
「お前、沸かしてくれたんか?」
「うん」
 さっそく風呂に入った。
本当にいい湯加減で気分はもう最高。
「はよ、上がって来てや」
 妻がそっと風呂場をのぞいて言った。
「どないしたんや?」
 さっきから気になってしかたがないので、
今朝の家族の対応の理由をたずねた。
「もう、きのうはあなたの誕生日やんか。
そやから、子どもらがお父さんにプレゼントするんや言うて、
張り切ってはよ起きて待ってたんやで、みんな」
 そうだ。
きのうは私の四十八回目の誕生日だった。
すっかり忘れていた、
自分のことなのに。
「奈津実がちゃんと覚えてたんや」
 中一の長女が覚えていてくれたとは。
しかもみんな眠いのを我慢して
起きて帰りを迎えてくれたなんて、
もう最高に観劇だ。
 そして、
子どもたち三人が相談して考えたと言うバースディ・プレゼントは、
アイマスクと耳栓。
昼の明るいときに眠らなければならない、
私の苦労をよく知っていたのだ。
 その日は手製のボール紙を黒く塗りつぶしたアイマスクと、
綿を丸めた耳栓を使ってグッスリと眠った。
幸せいっぱいの暗闇の中で、
心地よいイビキをかいたのである。
(母の友1996年12月号掲載原稿)
コメント
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